薄桜鬼*ひと恋めぐり
□平助の賭け
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『『『お疲れー!!』』』
『ぷはーっ!!今日は何社も回って疲れたぜー!!おかげで今夜も酒が美味いっ』
『新八っつぁんの場合、酒が美味いのはいつもの事じゃんか』
と、俺がちゃかすと子どもみたいな笑顔で応える新八っつぁん。
あーぁ、…まみはこの笑顔に惚れたんだろうな。
大型連休の前日、久々に新八っつぁんと左之さんと3人で呑みに来ている。
課の皆と呑みには行くものの、この3人でってのは久々で…やっぱ俺は気兼ねなく居れるし、楽しい時間だ。
『明日から連休だな。新八はどうせギャンブル三昧なんだろ?』
『仕方ねぇだろっ、どこに行っても人ばっかりだしよ、休みの日にわざわざ混雑する所に行く気にならねぇよ』
『新八っつぁんらしくて笑える』
『そういう平助はどこか行くのか?』
左之さんに話を振られて、俺は新八っつぁんを見た。
『…まみと旅行に行く』
いつもより真剣に言葉にする。
…新八っつぁんの眉がほんの少しピクリと動いた。
『そっか、そりゃ楽しみだな平助、土産頼むぜ』
俺が纏った空気に気づいた左之さんが、その場を和らげる為に言った。
新八っつぁんは…俺から目を逸らさずいる。
『新八っつぁん、…いいんだよな…?』
小さく言うと新八っつぁんが一口酒を口に含んだ。
そして…
『俺が駄目だっつったら…平助、お前は行かねぇのか?』
『そりゃ、新八っつぁん次第だぜ?』
『はーぁ…お前ら、ここで取っ組み合いだけはすんじゃねぇぞ?』
呆れたため息をついた左之さんは、ただ静かに見守っていてくれた。