薄桜鬼*ひと恋めぐり
□バレンタイン1
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街中が真っ赤なハートに包まれた…今日は2月13日、バレンタインデー前日。
私はお千ちゃんと二人で大型デパートの地下に来ていた。溢れかえる人波に押されて、お千ちゃんとはぐれないように必死になる。
『もーう…人、多すぎぃ』
困ったような口振りだけど女の子にとっては一大イベント!!人がごった返していようが何だろうが、楽しくて仕方ない!!
『総務課は人数少ないし、まみちゃんいいよね〜』
『営業課の社員数は社内一だもんねぇ、…ごめんねお千ちゃん、総務課に行っちゃって』
『本当よー、私バレンタインで破産しちゃうんじゃないかな…、まみちゃんと半分して配ろうかなぁなんて思ってたのになー』
『あははは』
『来月にはしっかりお返し貰わなくっちゃ♪』
二人して冗談を口にしながら、綺麗に並べられた様々な形のチョコレートを見て回る。
平助くんはどんなチョコレートが好きなのかなぁ…う〜ん……あまり甘いもの食べてる記憶がないんだけど…。
迷っていると、お千ちゃんがニヤニヤしながら手招きする。傍に寄って、お千ちゃんの指差す方に目を向ける。
『これ!!営業課の皆への義理チョコにどうかな♪』
そこには手のひらサイズの箱にデフォルトされたイラスト。お酒だったり女の人だったり…
『原田さんにはこの色っぽい女の人ので、永倉さんにはお酒で決まりっ』
『あははは、楽しそうだね』
お千ちゃんの口からサラリと出てきた永倉さんの名前に、やっぱりまだ胸の奥がドキッと反応した。
…はぁぁ…ヘコむなぁ…。
『平助にはチョコレート以外に何かプレゼントするの?』
ふいにお千ちゃんが振り向いた。
『え?あ、うん…まだ迷ってるんだけど…』
『悩むよね〜、平助って何が好きだったけかなぁ』
高校時代の記憶を辿っていたお千ちゃんの目がキラキラ輝きだした。
『そういえば…高校の時、手編みのマフラー貰ってた同級生を見て羨ましがってたな〜』
『手編み!?そんなの今から無理だよー、…そうじゃなくても私編み物なんてやった事ないし…』
『バレンタインデー前日に手編みは無理だね確かに。…今年は既製品にするとして、来年頑張ったらいいじゃん』
『…そうだね。お千ちゃん、上の階にも付き合ってくれる?』
『もっちろん♪』
私たちはもう一度、バレンタインのチョコで溢れたフロアを周り、会社で配る義理チョコたちを購入した。