薄桜鬼*ひと恋めぐり

□口づけの意味
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12月のある日曜日。
私は出社していた。
通常の業務の合間に異動の準備の為のデスク周りの片付けはさすがに大変だから、と土方さんに日曜出社を申し出たところ快諾してくれたのだ。
広々とした営業課のフロアで一人ポツンと、段ボールに荷物を詰めていた。


ほんの数ヶ月だったけど、思い出はたくさん残ってるんだよね…このフロアには。


いつも原田さんのデスクに永倉さんと平助くんが集まってきて、じゃれあっては土方さんに怒鳴られてたり…
フロアの端に設置されてる喫煙場所では、永倉さんがいつも煙草を吸ってったっけ…
永倉さんのデスクと私のデスクは背中合わせにあって…


思い出されるのは永倉さんのことばかり。


『…諦めるって、決めたのにな…』


うっすらと涙が滲む。


するとガチャっとドアの開く音がした。


…警備の方かな…


涙を拭ってドアの方に目を向けると、そこには…


『…、な、永倉さん…?』


『まみちゃんか?何やってんだ?今日は日曜日だぜ?』


『永倉さんこそ……』


『俺?俺、明日出社前に芹沢さんとこに行くんだけどよ、書類忘れちまって…』


頭をガシガシと掻きながら永倉さんは自分のデスクへと歩いてきた。


『…つーか…、何で荷物なんか纏めてんだ?』


『あ……えっと…その…』


何て答えたらいいかわからず、ただただ俯いていると永倉さんが険しい顔で尋ねてきた。


『まさか…会社辞める、とかじゃねぇよな…?』


『…ぃゃ、そうじゃないですけど……』


これは…ちゃんと言わなきゃいけない…よね


『あっ、あの…来月付けで総務の方に異動が決まりまして……デスク周りの片付けをしてたんです』


『…異動?こんな時期に?』


私は総務課の女子社員の退社のことを話した。


『短い間でしたけどお世話になりました…営業課の皆さん優しくて楽しい方たちばかりだったから…お仕事も楽しくできました』


『……なんだよ、それ…』


『え?』


『そんな急な辞令、おかしいだろ…何ですぐに言わねぇんだよ…』


永倉さんは拳を力いっぱい握りしめていた。


『何でもかんでも自分の中に押し込んでよ…我慢ばっかりしやがって……っ…』


瞬間――
私の体は永倉さんの腕の中にあった。
その状況がイマイチ理解できずに、ただ呆然としていた。


どうして…?永倉さんの腕の中に居るの…?


それでも少しして、私は状況を理解し、その腕の中から逃れようとした。


『あのっ…離してくださいっ…』


それでも永倉さんの腕が緩むことはなく、更に力を込めてきた。


涙が滲む。


…諦めようって思ってるのに…そんな風に抱きしめられたら…決心が鈍っちゃうよ……


『そんな…風にされたら…永倉さんの事、諦められないじゃないですか―……』


永倉さんの胸を力いっぱいに押し返す。
私なんかの力じゃびくともしないけど、何度も何度も…


すると、ぐいっと腰を引き寄せられたかと思うと…
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