薄桜鬼*ひと恋めぐり

□異動、もうひとつの想い
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12月に入り、社内も慌ただしくなってきた頃、私は土方さんに呼ばれた。


しかも…会議室。
…私、何かやらかしたかなぁ…
なんて不安を募らせていると、会議室のドアが開き、土方さんが入ってきた。


『悪ぃな、忙しい時に』


『いえ、大丈夫です…あのぉ、私に何か…?』


『中途半端な時期で申し訳ないんだが…今村、お前に異動の辞令が出てる』


『…異動、ですか?』


…それって、営業課から離れるってことだよね…?私、何かヘマやった記憶は全くないんだけど…え?え?何で?


そんな不安が顔に出ていたのだろう、土方さんは私を見て優しく笑った。


『お前の頑張りを認めてだ…って言いてぇとこだが…ちぃとばかり違う理由なんだ』


土方さんは胸ポケットから煙草を取り出し、火を点けると、ふぅーっと煙を吐き出して続きを話し出した。


『お前が配属されるのは‘総務’になるんだが…そこの女子社員がこぞって寿退社やできちゃった婚とやらで…今月、12月いっぱいで退社するらしくてな』


『…………はい』


『総務の源さん…、井上さんから営業課の女子を一人回してほしいと人事の山南さんに連絡があったらしいんだ』


……それで私が…?


『お前は仕事も覚えるの早ぇし色々な課で経験積んだ方が後々自分の為にもなる』


そうだろう?と付け足され、私は頷いた。


『ただ…来月1月1日付けってゆう特別扱いではあるけどな』


人事異動などは春に行われるものだもんね…
まぁ、それだけ急を要するってことなんだろうけど…


…永倉さんとは離れちゃうんだ…


胸の奥が小さくトクンと音を立てた。


もしかしたら…永倉さんの事は諦めなさいって神様が言ってるのかな…


『あの…営業課の皆さんにはまだ内緒にしておいてもらえますか?』


『…どうしてだ?原田や新八らに送別会やってもらえばいぃじゃねぇか…ちょうど年末だしよ』


『あ…、あの、年末で皆さん何かとお忙しいですから…自分でちゃんと話します』


『そうか』


『では、失礼します』


深々と頭を下げ、私は会議室を後にした。


営業課を離れるのか…
寂しいな…、皆ともすごく仲良くさせてもらってるし…何より、総務課には…永倉さんがいない。


しかも今月いっぱいで荷物もまとめなきゃならないし…
周りにバレずにやれるかなぁ…


お千ちゃん以外の人にはこの異動の話を伝えるつもりはなかった。
ズルいとは思うけど…年が明けてからお千ちゃんの口から言ってもらえたらなぁって。
永倉さんが寂しがってくれるなんて思ってないけど…、それを目の当たりにするのもちょっときつい。
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