薄桜鬼*ひと恋めぐり
□ドキドキの相手
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季節は夏――
4ヶ月前の桜の季節に私は憧れの社会人となった。
『ねぇ、まみちゃん?今夜はパァーッと呑みに行こうよ』
『お千ちゃん!!いいね♪毎日猛暑続きでやる気が失せる前にっ!!』
彼女はお千ちゃん。
入社試験の時、緊張のあまりに腹痛を起こした私を気遣ってくれた事がきっかけで仲良くなり、配属された部署も同じなこともあって今では親友と呼べるほどの仲だ。
『何、何?呑みに行く相談なら俺も仲間に入れてくれよ』
『平助くん』
彼は藤堂平助くん。
お千ちゃんとは高校からの腐れ縁らしく、同期で部署が同じってことでよく3人で呑みに行く。
『平助の奢りならいいよ〜』
『お千!!お前、給料前だっつーのっ!!』
希望してた会社に就職が決まり気のいい友達も出来、私は毎日楽しく過ごしていた。
私が配属された部署は営業課。
普段は外回りをしながらお得意様に挨拶をしたり会社の商品を売り込んだり、と一番大変な部署ではあるものの…へこたれるどころか私はこの部署が大好きである。
『おっ、新入社員で今夜の相談か?』
甘い声がして振り返る。
そこには3年先輩の原田左之助さんが立っていた。
甘い声とそれを一段と引き立たせる甘いマスク。
社内にいる女子社員の憧れの的。
確かに優しいし気遣いもさり気なく出来てしまうし…人気があるのはわかる気がする。
『原田さんも一緒にいかがですか?』
お千ちゃんがニッコリと微笑むと原田さんも満更でもなさそうに微笑む。