薄桜鬼*ひと恋めぐり

□ドキドキの相手
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『――ひゃっ!!!』
 
 
突然頬に触れたそれに驚き、肩をすくめた。
 
 
『わ、悪ぃ悪ぃ』
 
 
…頭の上から降ってきた声に私の胸がドキッと反応し、その声の主をゆっくりと見上げるとそこには…
 
 
『な、永倉さんっ!?』
 
 
白い歯をニカッと見せ笑う永倉さんが私に缶コーヒーを差し出していた。
 
 
『お疲れさん、暑ぃだろ?これ飲みな?』
 
 
『え?あ…ぁ、すみません…いただきます…///』
 
 
永倉さん…まだ会社に残ってたんだ…
 
 
『永倉さんも残業ですか?』
 
 
カチッと音を立て、缶コーヒーの栓を開け口をつける。
 
 
『ん?俺?…残業じゃねぇよ?』
 
 
ドクン…と、心臓が小さな音を立てる。
 
 
…まさか…もしかして……それって………
 
 
澄んだ青空のような曇りのないその瞳をじっと見つめ、彼の言葉の続きを待つ。
 
 
『土方さんから残業言いつけられてんの聞こえたからよ』
 
 
ゴクリと音を立て口に含んだコーヒーを飲み込んだ。
 
 
『1人で残業なんて寂しいだろ?だから待ってたんだ』
 
 
事も無げにさらりとそんな事を言ってのける永倉さんに…胸がぎゅっと締め付けられる。
 
 
…永倉さん、私の気持ち…気づいてるの?
 
 
彼にも聞こえてしまいそうな程にドクドクと脈打つ心臓…、苦しくて嬉しくて…涙が出そうになる。
 
 
『ありがとう…ございます!!すぐに終わらせますねっっ』
 
 
『おぅ!!頑張れよっ』
 
 
ぐしゃりと頭を撫でるその大きな手
 
 
永倉さんは空いてる席に座り、静かに私の仕事が終わるのを待っていてくれた。
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