薄桜鬼*ひと恋めぐり
□友達
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連休初日。
もうすぐ平助くんが迎えに来る時間。
…平助くん、話しする時間作ってくれなかった…、今日は言わなきゃ――!!!
うん、と小さく頷いたとき家のチャイムが鳴った。
ドキンと心臓が鳴り、体中が緊張に包まれる。
私は一呼吸置いてから玄関へ向かい、ドアをガチャリと開けた。
『―――っ、ど、どうしたんですか…?』
ドアの向こうに立っていたのは…
『…な、永倉さん……』
はぁはぁと息を切らした永倉さんだった。
『はぁはぁ……、はぁ、…間に合った…』
『あの……』
何故ここに永倉さんが来たのかワケが解らずにいると、その大きなふたつの手が私の両肩に乗った。
――――!!!!!
『平助と旅行に行くのは、なしにしてくれっ』
真剣な瞳。
あまりに驚いて、言葉が出ない。
するとカンカンとアパートの階段を上がってくる音がして、平助くんの声が聞こえた。
『げっ!!新八っつぁんっ!!つーか、早くねぇ?…昨日あんだけ呑んどいてよく起きれたなぁ』
『平助くん?…どうゆう意味…?』
『あ、まみ、おはよう!!詳しいことは新八っつぁんから聞いてくれよ』
私は、永倉さんと平助くんの二人の顔を交互に見て小首を傾げた。
『それと……、旅行もキャンセルな?…俺、いつまでも未練たらしいのとか好きじゃねぇし?他の男を想ってるまみと一緒に行ったって…楽しくねぇじゃん』
へへへ、と笑いながら話す平助くんを見て涙がこみ上げてきた。
平助くん…ごめんなさい…
『何、泣かしてんだよっ、新八っつぁん!!』
『ちょっと待てっ!!俺はまだ何もしてねぇぞっ』
『…平助くん…ごめん、私……』
『連休明けたらまた皆で呑みに行こうなっ!!』
大きくブイサインしてみせる平助くん。
彼の優しさに甘えてばかりで、結局はこんな風にしてしまって…、なのに平助くんはまだ笑ってくれるんだね。なんて優しいんだろう…。
『平助…』
『新八っつぁんは呼ばねぇけど?』
『な、何をー!?お前なぁっ…』
『じゃあな、新八っつぁん、まみ……感謝しろよなっ』
そう言うと平助くんは大きく手を振りながら階段を下りて行った。