僕らの3日間戦争
□導かれた戦士たち
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「バネさん」
名前を呼ばれたので、俺は後ろを振り向いた。
俺の目の前には真顔のダビデがいる。
次の瞬間、奴の指が頬に当たってぐっ、と沈んだ。
痛い。
「…何すんだよ、お前」
「馬〜鹿が〜見る〜」
「……」
言われて俺は問答無用で奴の頭に蹴りをお見舞いしてやった。
「バネさっ…ちょ、タンマ!」
とりあえず感情の許すまま、しきりにタンマと言っているダビデに特大級の飛び蹴りを放っておいたらすっきりした。
「なんだよ…お前やっぱりいつも通りかよ」
「スイマセン…」
そんな掛け合いで、俺たちは少し笑った。
もうこうして一日が過ぎたけれど、俺たちは出会ってからなるべく普段通りに話している。
そうするようにしてきたんだ。
気を紛らわさなきゃ、やってられる気がしなかったから。
さっき、亮が死んだと放送があった。
他にも何人も、何人も死んだ。
ここで全て終わったとして、もう元の日常には戻らない。
…それでも、屈しない。
そう決心して俺たちはどこに行くでもなく歩き続けていた。
「…!」
そんな折、ダビデがはたと動きを止めた。
「おいおい…今度はなんだよ?」
「…バネさん、アレ」
「…?」
奴は廊下の端を示した。
二人がいる場所からは少し離れたところに、何か人影が見えた。
そいつはキョロキョロと用心深く周りを見ながら歩いている。
「…あれ、ルドルフの柳沢じゃん」
「どうしよう、バネさん」
ダビデの素朴な疑問に、俺は少しだけ顎をしゃくって考えた。
俺の手持ちは…スタンガンだ。
ダビデは長めの手錠。
となると…
「とりあえず近寄ってみようぜ。何とかなるだろ」
「…そんなもんっすかね…」
「んな事は気にすんなって。ほれ、行くぞ」
俺たちは人影に近づき、立ちはだかった。
廊下に土足が擦れてじゃり、と音をたてる。
柳沢はわずかにビクッと飛び跳ねた。
怯えてこっちを見たかと思うと、すかさず手持ちのバットを握りしめて構えた。
しかし戦う姿勢をみせたものの、その手はかたかたと恐怖に震えている。
「なっ…何だーね!俺を殺すつもりなら、よ、容赦はしないだーね!かかかかってくるだーね!!」
…これじゃまるで俺たちが凶悪な殺人鬼のようだ、と思った。
こちらもスタンガンを握り直す。
「おう!上等だっ!!」
そう言って、お互いに走り寄った。