僕らの3日間戦争
□偽りの幸福
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何だか悪い夢を見てるみたいだった。
今の状況が信じられない。
さっきの顧問の話…首輪が、禁止エリアがどうとかいう。
そんな事は神尾の耳にはほとんど入っていなかった。
伊武だって、同じように呆然としていた。
誰も信じたくなかったはずだった。
なんて悪質な冗談なんだと鼻で笑ってやりたかっただろう。
…けど、桃城や、他にも何人かがもう死んでしまった。
神尾にとって、あんなに近くで、あんなに大量の血を見たのは初めてだった。
――どうして俺がこんな目にあわなきゃならねえんだよ。
風が吹き付けてきて、長めに伸ばした神尾の前髪を乱す。
「…何なんだよ、本当に…」
今、神尾はこの廊下に一人きりだ。
ゆっくりと歩き出し、廊下を抜けていく。
壁に手を触れると、ひんやりと湿った木の感触が伝わってきた。
「うわぁぁぁぁぁあっ!!」
「……?!」
突然、大音量で声が響いた。
反射的に背後を振り返る。
それはかなり近くから、矢のようにして神尾の耳に飛び込んできた。
今のは…何だ?
耳障りな、本能のままに全力で絞り出したような、あれは…
「叫び声…?!」
まさか。そんなはずない。
だってこんなの、嘘だ。俺は夢を見ているんだろ?
…そう思うのに、神尾は後ろに進んでゆく。
怖いもの見たさなのか、それとも確認をしたかったのだろうか。
――今聞こえたのは人間の叫び声じゃなくて、鳥が鳴いた声でした、と。
神尾はふらふらと音のした部屋に近づいていった。