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□Present for me
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あぁ、まただ。
この数日で嫌という程聞いたこのメロディー。

俺がアメリカに旅立つ前に、あの人が勝手に携帯を弄くって設定した、あの人専用のもの。


いい加減、わかってほしい。










「………只今留守にしております」

「俺様に何か言うことはねーのか」

「…どちら様で?」

「ねーのかよ」

「…………」

「………あーん?」

「…お誕生日おめでとうございマス」

「あぁ、ちゃんと覚えてたんじゃねーか」


一週間前から毎日電話がかかってくれば、誰だって忘れたくても忘れられないだろう。
何より、自分からお祝いの言葉を催促してくるなんてどうかしているとしか思えない。


「で、俺様へのプレゼントは」

「ない」

「はぁ?」

「だって、どうせ渡せないじゃん」

「宅配で送ればいーじゃねーか」

「…無理っスよ」


わかってない。
やっぱり景吾はわかってない。

そういう問題じゃないんだ。


本当のことを言うと、ちゃんと景吾の誕生日は覚えていた。
流石の俺もちゃんと恋人の誕生日は覚えている。


プレゼントを送ろうと内容を考えても、最後にたどり着くのは俺なんかが景吾に似合うプレゼントを買えるはずがないってことで。
俺が見たこともないような高価なプレゼントをたくさんもらうであろう人に何を送ればいいなんてわからない。
……負けたくないのに
何だって、景吾の一番でいたいのに。


「景吾いっぱいプレゼントもらうでしょ?俺のなんかもらったって…」

「バーカ、そんなことで悩んでたのか」


色々と考えに考えて紡いだ言葉をあっさりと否定されて、ムッとくる。



「バカって、人が本気で悩んでたっていうのに何っスか!?」

「まあ、いい。ちょっとそこでじっとしてろ。今からプレゼントを俺様がわざわざ受け取りに行ってやる」

「はぁ?何言ってんの。俺今アメリカにいるんっスけど」

「俺様を誰だと思っている?」


フッという人をバカにした笑いの後に聞こえてきたのは、ドアチャイムの音。
電話に傾けている耳と、もう片方の耳
両方から同じ音が聞こえてきた。

―Present for me



「よっ」

「ちょっ……何で!?」

「俺様も余り時間がねーんだ…行くぞ」

「ちょ、持ち上げんな、自分で歩ける!!!」

「…プレゼントが自足歩行したらおかしいだろうが」

「…………」







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