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□usually
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「ぶちょ………」
部長の膝に跨って、そのまま首に手を回し、逞しい胸に耳を当てる。
とくん、とくんと部長の生きてる音が聞こえる。
「どうした、何かあったのか?」
そう言って俺の髪を梳く部長の手は、優しくて温かい。
「別に、何もないっス」
「そうか」
その後は何は言う訳でもなく、部長は髪を梳く動作を繰り返す。
俺はただ、部長の鼓動の音を聞いているだけ。
特に何かがあるわけではない。
「好き」とか「愛してる」とかいう言葉はないけれど、部長の鼓動から、指先から、体温から。
部長の全てから伝わってくる。
何が?と聞かれても上手く言葉に出来ないような、ただ温かくて、優しくて、心地のいいものが伝わってくる。
幸せだった。
特別なことはないけれど、いつも通りの幸せ。
「………ぶちょ」
「何だ?」
「…やっぱり何でもないッス」
「そうか」
今のこの気持ちを伝えようと思ったけど、やっぱり伝えられなくて。
この優しさを胸いっぱいに受け止めようとそっと目を閉じると、頭の上に羽のようなキスが降ってきた。
*usually
いつも通りの幸せ。
いつも通りだからこその幸せ。