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□our road
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国光の膝の上。
そこが昔から変わらない俺の落ち着く場所。
コテンと頭を国光の体につけ、何を話すわけでもなく、ただぼーっと国光を見つめて時間を過ごす。
今日もいつもと同じように過ごしていたのだが、急にある映像が頭の中をよぎった。
…そう、あれは。
あれはまだ、俺も国光も中学生だった頃の…
「部長…」
思わず口に出たその言葉に、国光がほんの少し驚いたような顔をする。
「懐かしいな、その呼び方は……何か思い出したのか?越前」
そう言って、笑みの表情を作った国光は俺の髪にひとつ、口付けを落とした。
「うん、ちょっとね」
ちょっと…思い出したのだ。
もう随分前のこの日の出来事を。
俺の人生を大きく変えるような出来事だったのに、忘れてしまっていたなんて、やっぱり人の記憶なんて儚いものなんだ。
今日この日に、アンタに完封無きまでに叩きのめされて。
今日この日に、アンタから青学の柱という目標をもらって。
今日この日に、アンタに対して絶大なる憧れを抱いた。
大きな憧れは時間が経つにつれ、大きな大きな愛に変わってしまったけれどね。
今日はきっと、国光との始まりの日だ。
国光と俺の今を作った最初の日。…今まで、忘れていたけどそんなことは関係ない。
伝えなきゃ、胸から今にも溢れ出そうなこの気持ちを。
「国光、これからもよろしくね…ずっとずっと大好き」
ついでに頬にちゅっ、と小さな口付けを落とすと、額に、瞼に、鼻にと小さな口付けがたくさん降ってきた。
「俺も愛しているぞ、リョーマ」
最後に互いの唇と唇が触れ合って。
離れた途端にふたりでクスリと笑い合った。
中1のこの日から始まった俺たちの道。
今までふたりで一緒に歩いてきたこの道。
これからも、この先も、ずっとずっと続いていきますように。