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□azure
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あぁ、空が青い。

先程まで見ていた、白い病室の窓で切り取られた空とは違い、どこまでも続いている空だった。

肌が焦げてしまいそうな日差しも、鬱陶しく纏わりつくような熱気も今はただ愛おしく感じる。
今ならどんな些細ことなでも素晴らしいと感動してしまう、そんな気分だった。




「幸村っ!」


聞き慣れた声がした先を見てみると、そこには立海のジャージを着たレギュラー陣がずらりと並んでいた。


「部長!!」


そう言いながら赤也が軽い足取りで駆けてくる。
その後ろを他のレギュラー陣がのんびりと歩いてついてきていた。

「ぶちょ、これ」


ぐいっと差し出された両手には少しぐしゃぐしゃになった立海のジャージと俺愛用のヘアーバンド。
…全く、憎い演出をしてくれたじゃないか。

俺は赤也からジャージとヘアーバンドを受け取ると、それらを身につける。
目を閉じると感じる、肩の微かな重みと、額を締め付ける圧迫がとても懐かしかった。

―帰ってきたんだ。
俺は、やっと帰ってきた。


「幸村」


もう一度呼ばれた自身の名に、ゆっくりと目を開けると俺はレギュラー全員に囲まれていた。
一人一人から呼ばれる自分の名前に俺も一人一人の目を見て頷き返す。
最後に赤也から「部長」と呼ばれた後に、スッと生暖かい空気を胸一杯に吸い込む。
発した声は大きな声ではなかったけれど、自分でも驚くくらいによく響き渡った。


「俺、もう負けは許さないから」

「イエッサー!」

赤也が笑う。俺が笑う。
太陽の下、青空に包まれて皆が笑う。


ふと。
あぁ、やっと俺の夏が始まったなんて思った。


―azure
(俺たちの色、希望の青い空)








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