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□無敵
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「Happy birthday 越前」
いつもの別れ道で引き止められて、そう言われた。
わざわざ屈んで耳元で囁かれた無駄に発音のよいその言葉に、何だかムカつく。
―そして、その言葉で顔が熱くなる自分にもムカつく。
「で、プレゼントはないんスか?」
どうにかいつもの調子を取り戻したくて色々と考えた結果、口から出たのは可愛げのない言葉だった。
人によっては怒るであろうその言葉を部長はごく普通に聞き流し、近くの大型スポーツ店の袋を差し出してきた。
ラッピングがされていないところが、何とも部長らしい。
「開けてもいい?」
「あぁ」
ついていたシールをはずして袋を開けると、シンプルなデザインのリストバンドが入っていた。
中の包装も破って、袋を制服のポケットに突っ込み、手首にリストバンドをつける。
少し手を挙げると、制服の合間からちらりとリストバンドが見えた。
「やっぱり似合うな」
「リストバンドに似合うとかあるんスか?」
「あぁ、お前に似合うと思って選んだんだ」
…くやしい。
ちょっと治まったと思っていた熱が再び顔に集まり出す。