main

□無敵
1ページ/2ページ




「Happy birthday 越前」

いつもの別れ道で引き止められて、そう言われた。


わざわざ屈んで耳元で囁かれた無駄に発音のよいその言葉に、何だかムカつく。
―そして、その言葉で顔が熱くなる自分にもムカつく。


「で、プレゼントはないんスか?」

どうにかいつもの調子を取り戻したくて色々と考えた結果、口から出たのは可愛げのない言葉だった。
人によっては怒るであろうその言葉を部長はごく普通に聞き流し、近くの大型スポーツ店の袋を差し出してきた。

ラッピングがされていないところが、何とも部長らしい。


「開けてもいい?」

「あぁ」


ついていたシールをはずして袋を開けると、シンプルなデザインのリストバンドが入っていた。
中の包装も破って、袋を制服のポケットに突っ込み、手首にリストバンドをつける。

少し手を挙げると、制服の合間からちらりとリストバンドが見えた。


「やっぱり似合うな」

「リストバンドに似合うとかあるんスか?」

「あぁ、お前に似合うと思って選んだんだ」


…くやしい。
ちょっと治まったと思っていた熱が再び顔に集まり出す。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ