陰陽獣

□第十三章:決戦
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【鷹虎目線】


4日後俺達はジハドラバに到着した



獄禅「ご苦労だったな。無事宝珠に玄武の魔力を注ぎ入れる事ができたようだな」

龍斗「無事!?どこ見てんだよ親父!凱さんの片目潰れちゃったんだぞ!」

獄禅「凱の強さでも苦戦したのか」

凱「こんなのどうって事ねーよ」

獄禅「温泉でも入ってゆっくりしろ……と言いたい所だが、そんな時間は無さそうだ」

鷹虎「え?どういう事ですか?」

獄禅「ジハドラバに5人の強力な負の魔力の奴等が近付いてきている」

龍斗「え!?」

鷹虎「ご、5人って……それってまさか五指獣ですか!?」

獄禅「ああ。水無月に紅蓮。紅蓮は1年半前より相当魔力が上がっている。あとの3人はまだ俺が知らねぇ魔力だ」

鷹虎「でも奴等の仲間の時空間を切り裂いてここへ来ることのできる術を使っていた乱舞って奴は国王達が倒したんですよね?」

飛月「それに1年半前に奴等が来てから国王は結界を強力なものに張り直しましたよね!?あれはそう簡単には破られるとは思いません!ジハドラバに来ることは不可能なんじゃ……」

獄禅「龍斗が映る水晶玉で皆の様子を見ていたが、お前達紫雲の短刀の話をしていなかったか?」

鷹虎「紫雲の短刀、ご存知なんですか!?」

獄禅「ああ。紫雲の短刀は光属性の者が扱う事のできる短刀だ」

鷹虎「やはりそうでしたか。でもどんな効果がある短刀なんですか?」

獄禅「時空間を切り裂く事のできる効果があの短刀にはある」

鷹虎「な!」

飛月「そ、それって乱舞の術と同じ……」

獄禅「そうだ。それに俺の結界もすぐ切り裂かれ突破されちまうだろうな」

飛月「そ、そんな……」

獄禅「奴等は恐らくあと数時間もすればジハドラバに入り込んでしまうだろう」

龍斗「ま、まじかよ」

鷹虎「国王から見て今の俺達の戦力と奴等の戦力はどちらが上ですか?」

獄禅「奴等だな」

鷹虎「そうですか」


獄禅国王はレベル8強。レベル9に限りなく近いだろう

凱は白虎を覚醒してレベル9強。相当強い

そして俺がレベル6強で、飛月がレベル6。龍斗がレベル5だ


鷹虎「俺達で戦力になるのは国王と凱だけですか」

獄禅「いや。まだいるだろう?」

鷹虎「え?」

獄禅「お、噂をすれば来たようだな」


その時部屋の扉が開いた


そこにいたのは


獄禅「ちょうどよかったぜ」

鷹虎「!」


背の高い綺麗な銀髪の逞しい男


龍斗「え!?こ、この人って」

獄禅「お前のもう1人の親の銀牙だ」

龍斗「えっ!!こ、この人が!?」

銀牙「…………」

龍斗「す、すっげーかっけー!」


誰とも目を合わせようとしない銀牙


獄禅「銀がこうやって人前に姿を現す事は初めてなんだ。無愛想な奴だがちょっと大目に見てやってくれ」


龍斗の親父の銀牙

レベルは8か


鷹虎「でも国王。失礼ですがいくら銀牙殿が強くてもまだ奴等の戦力の方が上だと思うのですが」

獄禅「おーい。出てこいよ」

鷹虎「え?」


獄禅国王が呼び掛けると部屋の奥からあいつがやってきた


鷹虎「…………」


正直こいつは好きになれねぇ

顔も見たくねぇ




雷響「……どもっす」

鷹虎「…………」

凱「おう。元気だったか?」

龍斗「すっかり雷響さんの存在忘れてたっすよー!」

雷響「おま、ふざけんなよ!ひでぇ」

鷹虎「……国王。こいつが何なんすか。戦力どころか足手まといですよね」

雷響「…………」

龍斗「た、鷹虎先生?どうして怒ってるんすか?目の色まで変わってるすよ?」

獄禅「まぁ落ち着けよ鷹虎。確かに銀と雷響が加わっても五指獣の奴等の方がまだ戦力は上だ。でもまだこっちには超強力な戦士がいる」

龍斗「おおっ!そんな強い人がまだいたんすね!」

鷹虎「その人は今どこに?」

獄禅「俺の目の前にいるぜ?」

鷹虎「……え」

獄禅「お前だ。鷹虎」

鷹虎「っ!?な、何を言っちょるんすか!?」

獄禅「いいか鷹虎。今から話す事をよく聞いてくれ」



そこで俺達は俺が彩虹石の瞳を持つ四神獣朱雀の血の持ち主の可能性があると聞かされた


鷹虎「う、嘘だろ?俺が朱雀の!?」

龍斗「まじっすかー!鷹虎先生が四神獣!すげぇすげぇ!!」

凱「確かに鳥系の陰陽獣の血の奴は沢山見てきたけど、鷹虎程目の色が変わる奴は見たことなかったもんなー」

鷹虎「し、信じられんわ……」

龍斗「じゃあ鷹虎先生が親父から朱雀を覚醒してもらえば五指獣とやり合うくらいの戦力が手に入るって事っすね!」

飛月「で、ではすぐに朱雀の覚醒の準備を!俺達は部屋から出ていきましょう」

獄禅「いや待て」

鷹虎「……?」

獄禅「朱雀の覚醒を成功させるには1つ条件がある」

龍斗「条件?」

獄禅「鷹虎よ」

鷹虎「はい」

獄禅「自分の過去を偽り無く隠さず受け入れろ」

龍斗「え?どういう事?」

鷹虎「……国王。俺には何の事かさっぱり」

獄禅「偽って生きている者は何度俺が試みても朱雀は覚醒しないだろう」

鷹虎「……それ以上言ったらあんたを殺す」

獄禅「では朱雀の覚醒は諦めよう。五指獣にも負けてジハドラバ、いや世界も滅びる。それで決まりでいいな」

鷹虎「…………」

龍斗「た、鷹虎先生?よ、よくわからないけど俺は鷹虎先生に朱雀を覚醒してもらいたいっす!だってそしたら鷹虎先生は今よりもっと強くて格好いい鷹虎先生になるんすよね?俺、そんな鷹虎先生見てみたいっす!」

鷹虎「……龍斗」

獄禅「どうすんだ?時間がないぞ」



怖い

怖い!!


でも俺が言わなければ本当に世界は滅びてしまう!



鷹虎「………わかりました」



俺は


生まれた時から盗賊だった事

子供の頃から平気で何人もの人を殺し生活していた事

自分の親も殺した事

奴隷だった事

その後また炎樹の盗賊団に入り人を何人も殺して生活していた事


全てを話した



龍斗「……う、嘘」

鷹虎「……りゅ……龍斗……お、俺を……許して……」


涙が溢れて止まらない


鷹虎「……りゅ、龍斗……お、俺を……嫌わないで……」

凱「あーあ。鷹虎って頭いいのに馬鹿だよなー」

鷹虎「…………」

凱「鷹虎。涙拭いて顔を上げてちゃんと龍斗の顔を見てみろよ」

鷹虎「……え?」


顔を上げて恐る恐る龍斗の顔を見た


鷹虎「!!」

龍斗「……だ、だがどらぜんぜい!」

鷹虎「ど、どうして龍斗が泣いてんだよ!」

龍斗「だって!だって!そんな過去をずっと隠して生きてたんすよね?辛かったっすよね!?」

鷹虎「りゅ、龍斗……俺を嫌わないのか?盗賊、大嫌いだろう?」

龍斗「……盗賊は嫌い。でも今は変わって一生懸命生きてる人は好きです」

鷹虎「……龍斗……ありがとう……」



言えてよかった


言ってよかった



心に乗っていた重石がすっと消えていった




【雷響目線】


獄禅「鷹虎、雷響にその過去を弱みにして瞳の色を確認させるように頼んだのは俺なんだ。雷響は何も悪くないんだ」

鷹虎「雷響、冷たい態度とってしまって本当にすまなかった」

雷響「い、いやいいんすよ!」

龍斗「そんな事をさせた親父を恨んじゃいましょうよ鷹虎先生」

獄禅「お、おいおい……ん、まぁ恨まれても仕方ないか。本当にすまんな」

鷹虎「いや、でもおかげで凄くすっきりしているんです。むしろ感謝したいです」

獄禅「それならよかった」

凱「ところで鷹虎は覚醒しそうなのか?」

獄禅「ああ。今の鷹虎なら確実に覚醒は成功する」

龍斗「おおー!」



その時

獄禅国王は俺に向かってウインクをしてニコッとしてくれた


きっと鷹虎殿の覚醒は、過去の事なんか話さなくても成功していたんだ

俺が少しでも鷹虎殿から嫌われないように、自ら過去を話させたんだ



ありがとうございます獄禅国王
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