野獣
□どぅじゅん
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これも愛
うわ、と言う私の短い悲鳴とともにドゥジュンの手から偽物のゴキブリがぴょんと跳ねる。ぴょんとか可愛い効果音付けたくないんだけどな…
なんだろう、最近凄くユン・ドゥジュンがウザい。
『まじなんなのさっきから』
「えー?
なんであべ怒ってんのー?」
『一回殴らせろユン・ドゥジュン』
ドゥジュンはケラケラ笑いながら私の顔に偽物のゴキブリを近づけてくる。凄く、不快。きっと痴漢されたときとかこういう気分なんだろうな、と思う。それでも私とドゥジュンは恋人同士なわけで、拒絶したいとは思わないけど。この人、おかしい。
「あべ最近、
夢小説ハマってんだろ?」
『う、まあ…ね』
なんか言われそう。いやこの顔は絶対なんか言うな。絶対言うわ。私がハマってる夢小説は実を言うとお笑い芸人の。これ言ったら絶対確実誰からも嫌われて友達いなくなるから言ってないよ、言わない言わない。
「…知ってる?
それって現実逃避って言うんだよ?」
『お前いっそ死ね』
「死ねって彼氏に対して
それはないだろ!」
『わかった。
お星様になって頂けませんか?』
「嫌だ俺は一生生きる」
『うわあ
それはいけないよ、
そういうやつは悪質なやつが多くて
将来大きなミスに気付くよ』
「よく長い台詞言えたな」
『二度死ね』
とにかく、ニヤニヤしながら私の言うこと一つ一つに反応して文句つけて私が機嫌を悪くすればまたニヤニヤしだす。なんて憎たらしいやつ。彼は最近私をいじめることにハマっているらしい。
『ちょっとそこどいてよ
テレビみえないじゃん』
「あべ〜、
サッカーしようか」
『は?やだよ、
ヨソプとやればいいじゃん』
「じゃあサッカーみようか」
『やだ』
「じゃあ夢小説読もうか」
『うるせぇ……』
また再びドゥジュンはニヤニヤしだす。私はドゥジュンに蹴りを入れた。ドゥジュンはへなへなと床に座った。痛いーと叫びながら私を度々チラ見してくる。構ってほしいんだな、気持ち悪い。
「なんだよーあべー
好きだからいじめてんのに」
『…めちゃくちゃウザいよドゥジュンくん』
「好きなのにぃー」
『気持ち悪いよドゥジュンくん』
そう言い放つとドゥジュンは何もなかったかのようにパッと立ち上がると私にタックルしてくるみたいに抱き着いてきた。すごい顔面で(本人には言えないけど)走ってきて抱き着いてきたドゥジュンは「あべ〜!」と叫ぶ。
『離れろ!暑い!痛い!』
「俺の愛の大きさだぞー」
『わかったわかった!
十分伝わった!
暑い!』
「あべ〜!」
ドゥジュンの私の名前の呼び方からなぜかいつも以上に愛が伝わってきて胸がジ…ンとした。さっきまでいじめてきたドゥジュンが急に愛しくなってきて、笑顔になってしまう。
「あ、あべ
鼻水垂れてんぞ?」
『え!?』
「ウッソー!」
それから私は永遠とドゥジュンに蹴りを入れていました。
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