野獣
□じゅにょん
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おちる
「引っ付くな、きもい」
『ジュニョンの匂い!』
「…きもい」
今、俺の腕に巻き付いているこの女はあべ。恋人でもないのにいつもベタベタしてくる厄介者。ストーカー。いつも気が付いたら宿舎にいてそして俺の隣にいる。事務所の社長の娘らしいから追い出したりひっぱたいたりはできない。もどかしい。
YS「ジュニョンがお気に入りなんだねっ」
「まじ勘弁してくれ」
『ジュニョンだいすき
好きすぎて死んじゃいそう』
って真顔で言って来るから驚いた。俺、この子に何も良いことした覚えないんだ。俺はなんでこんなに気に入られてるんだ?
あぁそうだ、俺はこの子に気に入られることをしたんだった。
酔ってた。酒は本当にこわい。
酔ったままこの子に可愛いとかきれいとか言って口説き落とそうとしたんだよな……
『ちゅうしよ』
「断る」
焦った。いやいやいや、事務所の社長の娘とキスなんて、いやいやいや。
しかもメンバーいるし。あ、メンバーがいなかったらするとかそんなんじゃないけど!
あべは顔を歪ませた。あべは本気で俺が好きらしい。そりゃそんなに積極的にきたら俺だって、なんかなんかさ、変な気持ちになるよ。
ひとりでいろいろ考え込んでいると頬に柔らかいものが触れた気がした。
そっと顔を向けるとあべが、めっちゃ可愛い笑顔で俺をみつめてくる。
あぁ…おちたかも。
(今 俺 変なこと
考えてしまった!)