頂き物
□獣の奏者さん
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この体質のせいで・・・俺は初恋を諦めた。
愛しい人を、傷つけたくなかったから。
それなのに、あなたは・・・
「お疲れ様です・・・お先に失礼します。」
「お前、今日ウチ来い。」
「はぁ!?やですよ!・・・それに今日はどうしても外せない用事があるんです!」
「・・・来なかったら明日仕事3倍な。」
「ほんとです!今日はどーしてもどおおおしてもだめなんです!」
お願い、お願いだから、、、、今夜は俺に近づかないで。
俺に、触れないで。
祈るような気持ちで高野さんを見つめる。
「チッ・・・じゃあ明日来い。」
「・・・明日のことは明日考えます・・・。」
「・・・おう。じゃーな。お疲れ。」
高野さんは最初は不満そうだったものの、明日はいいとほのめかした俺の答えに満足したのか微かに笑った。
・・・その表情を見て、俺はほっと胸を撫でおろしていた。
今夜だけは、だめだった。
満月の、今夜だけは。
帰ってすぐ、冷蔵庫の中に入れていた血液パックを出した。
室温に置いて体温に近い温度まで戻す。
その間にお風呂に入ろうと、浴槽にお湯を溜め始めた。
ソファにどさりと座ると、テーブルに置いた赤黒い血液パックが嫌でも目に入る。
・・・どうして俺はこんな家系に生まれてしまったんだろう。
そうすればこんな思いなんてしなくて済んだ。
どす黒い赤を見ながら鬱々とした気分になるのは、もうこれで何度目だろう。