導きの旅路

□00.その夢は現か幻か
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「はっ、はぁ……、はぁ……」





自分の口から漏れる吐息が震えているのがわかる。
次第に体まで震えてきて止まらない。
なぜだか周りの風景がぼやけて何も見えない。
どこかにいる筈なのにどこにいるのかわからない。
まるで真っ暗闇の世界の中でたった一人でいるような気分になる。
その時、目の前で何かが鮮明になって浮かんできた。




「っ!?」




それが何か……。
否、誰か認識した瞬間、心臓が凍ったように感じた。
目の前には傷だらけで息も切れ切れにぐったりと目を閉じている最も大切な人の姿。
気を失っているのか全く動かない。
その事に焦燥感をかられ必死に肩を掴んで揺り動かす。




「し、しっかり! ねぇ、起きてよ!」




自分の声が掠れていたがそれでも呼びかける。
返事がない事に更に焦りを感じる。
投げ出されている力の無い手を掴む。
しかしその手は冷たく、そしてその体もどんどん冷たくなっている。
なぜか直感的にもうダメだと感じてしまった。
助からないし助けられない。
触れている自分の手が震えている。




「ダメ、だよ……」




声まで震えている。
もう震えていないところなんてないんじゃないだろうかと思う。
届かないとわかっていても言葉を紡ぐ。




「死んじゃ、ダメだよ……」




涙が溢れる。
泣いている場合じゃないのに止められない。
視界が再びぼやけてしまう。
その姿が見えない事が恐ろしく、目の前の体を抱き締める。
冷たくなっていく体をより鮮明に実感してしまう。
それでも離せず、寧ろ力を強める。









「おね、がい……、死なないで……。




―――!!!」





 
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