導きの旅路
□00.その夢は現か幻か
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「―――っ!!!」
目が覚めた瞬間、思わず勢いよく飛び起きる。
体中が汗だくで息も乱れていた。
少し深く息を吐いて自分を落ち着かせる。
時計を見ると普段起きるよりも更に早い時間だった。
思わず叫んだりしなかったのは幸いだった。
こんな時間に家族を起こすのはかなり申し訳ない。
しかも理由が……。
「……シャワー浴びよ」
とにかくさっぱりしよう。
そしてあんな悪い夢は忘れよう。
高校生にもなって悪夢にうなされて飛び起きたなんて誰にも言えないから。
全部洗い流してなかった事にするんだ。
「なんであんな夢を見たんだろ……」
縁起が悪いにも程がある、あまりにも鮮明過ぎる悪夢。
まだ手にあの冷たくなっていく感覚が残っている気がした。
なんで、なんで、と考える。
俺があいつの事、好きだから?
捨てようと、離れようと思うあまり求めていたから夢に出てきたのか。
だけどあの夢は、どんなに手を伸ばしても届かないという事を示しているように思えた。
手を伸ばして失ってしまうくらいなら、最初から諦めている方がよっぽど良い。
わざわざ夢に出てこなくてもそのぐらい理解している。
夢の中でさえも希望など持たせてもらえない。
それだけ不毛な想いを自分は抱いているという事なのだろう。
服を脱ぎシャワーを浴びる。
そうする事で先程の夢の記憶も、この無駄な想いも洗い流せたら良いのにと思った。