01/09の日記
23:40
瑠陽ちゃんのバイト
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『もし泪のシリーズの瑠陽ちゃんがバイトをしたら』というIfのお話です。
デフォルト名は「兎原瑠陽」を使用します。
瑠陽ちゃんが大学2年生の設定です。
バイトは塾でお手伝いをしています。
視点は第三者のモブの男です。
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疲労で自然の口から溜め息が漏れる。
携帯を開いて時間を見れば、もう夜の10時をまわっていた。
ゼミの先輩に付き合ってレポートの手伝いしてたらこの時間だよ…。
クソ、缶コーヒー一本は割に合わねえよ畜生。
しかも明日はバイトだ。コンビニの早番だ。
今日はもうさっさと帰って寝よう。
携帯を閉じてポケットに仕舞い顔を上げる。
ふと反対側の歩道に目を向けた時、見たことのある人が道路の方に目を向けてそわそわとしていた。
「…あれって、」
兎原さんだ。音楽科の兎原さんだ。
教育学部の八神さんと文学部の高石といつも一緒にいる。
こんな時間まで何やってんだろう、バイト?
そう言えば…塾のバイトがどうのこうのって、八神さんたちが騒いでたっけ。
塾のバイトかー、と想像するのは兎原さんと小学生くらいの子供たちのやり取り。
『先生ー!これ出来たよー!!』
『どれどれ?…うん正解!よく出来ました。』
『えへへ!先生の教え方が上手だからだよ!!』
…良い。
兎原さん絶対良いお母さんになるだろうな。
のほん、とした気持ちになって母親姿の兎原さんも想像してみる。
『おかあ〜ん…!』
『ん〜?…って、どうしたのその怪我!?』
『転んだ〜…!!』
『まあまあ大変…!!痛かったでしょう、今手当するからね?』
『ううう…!!』
『ほら、もう大丈夫だよ。おまじないも掛けてあげるから。』
『おまじない?』
『うん。痛いの痛いの飛んでけ〜!』
……良い!!
可愛い!!兎原さん可愛い!!
ぎゅううううう、と胸のところを服に皺が出来るくらい握り締める。
軽く息を整えて顔を上げ、今一度兎原さんに目を向けた。
「…。」
兎原さん、これから帰るのかな?
っていうか、俺の事知ってんのか…?学部違うし…。
か、彼氏とか…いんのかな…?
グ、と拳を握って唇を噛み締める。
緊張で逸る心臓を押さえて、俺は足を進める。
自然に、自然に。
『兎原さん。』
『…えっと、』
『あ、俺同じ大学のもんなんだけど…。
兎原さんみたいに有名じゃないから、知らないよな。
あはは、ごめんごめん。』
『い、いえそんな…!!私の方こそ、同じ大学なのに知らなくてすみません…。』
『ああ、いいっていいって。学部も違うし。
あ、これから帰り?バイトだったの?』
『はい、今バイトが終わって。』
『よかったら近くまで送るよ?夜は危ないしね。』
『ええ!?そんな、悪いですよ…!!』
『いいからいいから。行こ?』
『…あ、ありがとうございます。』
そう言ってふんわりと笑う兎原さん。
…よし、イメトレは完璧だ…!!
横断歩道を渡って兎原さんの元へ行く。
一度深呼吸をしてから、意を決して口を開いた。
「あ、あの…兎原s」
俺の言葉を掻き消すようにして、聞こえてきたのは低いエンジン音。
それに兎原さんは、わっかりやすいほどの笑みを浮かべて見せた。
ああ可愛い、なんて思う間もなく兎原さんの目の前に厳ついバイクが止まる。
「悪い、遅くなった。」
「ううん、大丈夫。今バイト終わったところだから。
私の方こそ、毎回送り迎えしてもらってごめんね?」
「ばーか、俺が言いだしたことだ。お前が気にすることじゃねえよ。」
「ふふ、ありがとうベルゼブモン。」
「さっさと帰るぞ。早く乗れ。」
「うん。」
バイクに乗ったおっかない人。
いやあれは人じゃない。多分巷で噂のデジモンとかっていうやつだ。
全身真っ黒でライダースジャケットを着ている。
左腕に巻かれている赤いスカーフがアクセントになっているじゃないですか。
兎原さんとは正反対のような感じのデジモンだな…。
兎原さんを天使と例えるなら、あのデジモンは悪魔だ。いや魔王だ。
兎原さんへと伸ばした腕は行き場所を失くし、開いた口が塞がらない。
アニメだと今の俺は、真っ白に燃え尽きているだろう。
兎原さんは嬉しそうな表情のまま、バイクの後ろにまたがる。
それからおっかないデジモンの腰にしっかりと抱き付いていた。慣れてらっしゃる。
「しっかり掴まってろよ。」
「はーい。」
デジモンの言葉に素直に返事をする兎原さん。
デジモンは俺に目を向けると、一瞬だけ冷たい目で俺を睨み付けてそのまま去って行った。
「………帰ろ…。」
俺が馬鹿だった、ただそれだけの話だ。
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Twitterでちょっとだけ盛り上がったネタを書きなぐってみました。
とっっっっっっっても楽しかったです。(小並感)
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