11/13の日記

19:27
ハロウィンネタ
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かなり遅くなりましたがハロウィンネタを。

先日大量に絵をくださった、蒼様へのお礼です。
蒼様の絵の『泪のシリーズ』ハロウィン絵のその後です。

デフォルト名「兎原瑠陽」を使用します。



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毎年10月31日に行われる祭り。
カボチャの中身をくりぬいて「ジャック・オー・ランタン」を作って飾ったり、子どもたちが魔女やお化けに仮装して近くの家々を訪れてお菓子をもらったりする風習などがある。

そして、その日に言うべき魔法の言葉が存在する。


ウィキペディアより一部抜粋。




いつもとは違う黒いワンピースを身に纏い、猫の耳と尻尾を付け、かぼちゃをあしらったカチューシャを着けている。
この衣装は、ミミが見立てたものだった。
小さな籠のバッグの中には、昨日の夜にせっせと作っていた菓子が小分けにされて袋に包まれている。
にこにこと笑うその人物は、はたして今日のこのイベントの意味を理解しているのだろうか。


「ヒカリちゃん、ハッピーハロウィン!お菓子どうぞ。」
「瑠陽ちゃん…結婚して!!」
「ちょっと!ヒカリちゃん!!」
「あ、タケル君もどうぞ。」
「ありがとう瑠陽ちゃん結婚しよう。」
「ちょっとタケル君!!」


ちょっと目を離した隙にこれだ。
ヒカリとタケルは睨み合っていて、その背中には龍と虎が見える。

当の本人はと言うと、おろおろとして2人を宥めようとしていた。
そんなことしても無駄だということを、瑠陽はまるでわかっていない。

俺様は溜息をひとつ落とし、目を閉じる。次いで開けた時にはもう視線は高くなっていた。


「何してんだ、行くぞ瑠陽。」
「ば、バアルモン…!でも2人のこと止めなきゃ…!!」
「そんなんで止まるわけねえだろ。いいから、こいつらのことは放っておけ。」


「だけど、」と渋る瑠陽を抱きかかえる。
互いを睨み付けることに忙しい2人は、俺が出てきたことにも気づいていなかったからか、瑠陽を連れ出すのはそう難しいことではなかった。


「おい瑠陽。」
「何?」


いつも通りの速さで歩き家路につく。
瑠陽はこてん、と首を傾げて俺を見上げていた。


「お前、ハロウィンの意味知ってんのか?」
「え?勿論知ってるよ!お菓子を配る日…だよね?」
「…違う。」
「ええ!?」


やっぱりこいつは、ハロウィンのことを理解していなかった。
驚いて目を見開いている瑠陽に、俺は小さく嘆息する。


「ハロウィンっていうのは、別に菓子を配り歩く行事じゃねえんだよ。」
「え?え!?じゃ、じゃあどんなことするの!?」
「仮装した子供たちが、いろんな家に行って菓子を巻き上げる行事だ。
そもそもここは日本なんだから、そんな行事があること自体おかしいんだがな。」
「ま、巻き上げるって…。」


瑠陽は乾いた笑いを漏らし、呑気な声色で「そうだったんだ〜。」と呟く。
ちらり、と見えた瑠陽の持っている籠の中は空だった。


「…瑠陽、子供達がどうやって菓子を貰うか知ってるか?」
「え?…普通にお菓子くださいって言うんじゃないの?」
「違うな。菓子を貰うにはある言葉を言わなきゃならねえんだよ。」


俺の言葉に、瑠陽はきょとんとした表情になる。
それに俺は、薄らと目を細めた。


「Trick or Treat。」
「とり…?」
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞって意味だ。」
「へ〜!あ、だからお化けとかの仮装をするんだね!」


なるほど、なんて笑みを浮かべる瑠陽。
俺は歩いていた足を止め、瑠陽の顔を覗き込んだ。


「瑠陽。」
「ん?」
「Trick or Treat。」
「…え?」
「とりっくおあとりーと。」

2回、3回と瑠陽はまばたきをする。
そして、やっと理解できたのか申し訳なさそうに眉を下げた。


「ごめん、バアルモンの分のお菓子は家にあって…。
お腹空いた?」
「…そういうわけじゃないんだが。」
「バアルモン?」
「菓子が無いんじゃ、仕方が無いよな。」
「うぇ?」
「悪戯、ってことで。」

にやり、と口角が上がる。
それから数秒間を開けて、その表情を強張らせた。


「ちょ、ちょっと待って…!お菓子なら家に…!」
「でも今は無いんだろう?」
「そ、うだけど…!でも悪戯って…!!」
「しょうがないだろ?」


瑠陽を抱きかかえ直し、下からその顔を覗き込む。
瑠陽は少しずつその頬を赤く染め、俺から視線を逸らした。


「瑠陽。」
「バ、アルモン…近いよ…、」


押し返そうとしているのか、瑠陽は俺の肩に手を添える。
しかしその手には力が入っていなかった。
少しずつ顔を近づける。瑠陽は目と口をきつく閉じた。俺は少し間を開けて、その額を指で弾く。
瑠陽は驚いたように目を見開き、両手で額を抑えた。


「へ!?」
「言ったろ?悪戯だって。」


小さく笑いを零して、また再び歩き出す。
瑠陽は赤い顔のまま、俺を睨み付けていた。
まあ、こいつの睨みなんてたかが知れているが。

内心ケラケラと笑っていると、突然瑠陽が俺の首に抱き着いてくる。
驚いて声を上げて足を止めれば、瑠陽が俺の耳に口を寄せて囁いた。



Trick or Treat


やられた、と視界の端に映る猫の耳と尻尾を睨み付ける。
赤くなっているであろう顔をどう隠そうと考えを巡らせた。





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