08/03の日記

01:01
ウィザーモン命日SS
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ウィザーモン←テイルモンです。

暗めのお話になるように頑張りました。







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腕に抱えた花束が香る。
良い匂いだ。これにして良かった。

お前は知らないだろうが、毎年何を買えばいいか、私とヒカリは花屋の前で悩んでいるんだ。

よく考えれば、私はお前の好きな花すら知らない。
お前のことを、よく知らない。



「…お前も私も、自分のことはあまり語らなかったからな。」



地面に花束を置いて、口元にだけ笑みを浮かべる。
ヒカリも隣にしゃがみこんで、じぃっと花束を見つめていた。



「…テイルモンは、さ。」
「ん?」
「最期はどうしたい…?」



私に尋ねるヒカリの声が、微かに震えている。

最期、か…。
私たちデジモンにも、人間と同じように寿命がある。
人間と同じように、最期は死を迎えるのだ。

ヒカリの震えている声には気づかない振りをして、私は小さく口を開いた。



「私はここに残るよ。」
「…どうして…?デジタルワールドに帰った方が…!!」
「もし私がデジタルワールドで最期を迎えたとしても、次に生まれ変わった時にヒカリがいないんじゃ意味がない。
それに、私はこの世界が大好きだ。
ヒカリが大好きなこの世界が、私も大好きなんだよ。
だから私も、大好きなこの世界で最期を迎えたいんだ。」
「テイルモン…。」
「それに、」



腕を伸ばして地面に置いた花束に触れる。

蝉の鳴き声に掻き消されそうなほど小さな声で、私は言葉を続けた。



「ウィザーモンが死んだこの世界で、私も死にたい。」
「…それは、ウィザーモンのことが…好きだったから?」



ヒカリの言葉には、笑っただけで答える。
それでも伝わったらしくて、ヒカリは一瞬だけ泣きそうな顔をした後、私を抱きしめた。



「…心を持つために、私はウィザーモンに出会ったのかもしれない。」



切なくて、苦しくて、会いたくてしょうがない。

私を抱き締めるヒカリの腕に、そっと自分の手を重ねた。



「…また会おう、ウィザーモン。」



私がそう零せば、ヒカリは少し間を置いて私を抱えて立ち上がる。
風が花束を僅かに揺らしたのを一瞥して、ヒカリは踵を返した。



「――テイルモン。」
「!!」



微かに聞こえた声。
穏やかで優しいその声に、私はまた今年も涙腺が緩んだのを感じた。


お前には敵わないよ、ウィザーモン。




風に揺れたシオン


(あなたを忘れない)









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