★リミの部屋★

□眞魔国の中心で、陛下と泣き叫ぶ
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この世は競い合いの世界。
国のありとあらゆる者達をも虜にしてしまう罪なお方の為に、我々は日々水面下のせめぎ合いを繰り返し、王のご寵愛を一身に受ける最高の幸福を掴み取り合っているのです。
王の名はユーリ陛下。眞魔国第27代魔王陛下にあらせられます。
ああ…美しく磨かれた黒い御髪は太陽の光を浴びて爛々と煌めき、黒い瞳は尊敬と畏怖を持ち、どこまでも深い闇を照らす……まさに我々魔族の希望の星!貴方様こそが真の指導者!
ゴホン……この国には陛下のご寵愛を一番に受ける為、皆が日々競い合っているのです。
陛下のお育ちになったお国の御言葉に替えさせていただけば、まさに大奥にござります!


「まて、大奥って女が上様に好かれたいが為に争い合うってやつだろ?ツェリ様は立派な女性だけど、ギュンターは立派なご長寿じゃん。ヴォルフは天使のごとき美少年だけど……まあ82歳の立派な男だよ」
自分のモテなさを日々呪い続ける、27代魔王・ユーリ陛下は落胆の息をついてそう言った。この後には必ず、てゆーか俺たち男同士じゃん!?と続く。
ここは魔王の直轄地、血盟城の救急室だ。そして彼は眉を吊り上げながら憤慨する麗しの王佐、フォンクライストギュンターを落ち着かせようとしていた。
「そんな付いて回んなくたっていーぞ。ここは城なんだし、一人で行動しても大丈夫だって」
王の護衛にあたるウェラー卿は急な遠乗りによって派遣され、護衛には王佐であり教育係であるギュンターと、婚約者であるヴォルフラムが代わりを勤めていた。だが婚約者様は愛娘・グレタの側に付きっきりで、彼の側にはギュンターがぎっちりだ。俺だってグレタと遊びたいのにーっ!と先程から嘆き続けている。
「そうはいきません!もし貴方様を狙っている輩でめ現れようものなら……なんと恐ろしいことでしょう!…私の陛下が…」
「いつからあんたのモノになったんだ」
「終わりましたよ、陛下」
すると、慈愛に満ちた瞳がこちらに優しい視線を向けた。彼女の名前はフォンクライスト卿ギーゼラ。驚いたことにギュンターの義娘だという。彼女は癒しの手の一族の者で、治癒魔術に長けている医療のスペシャリストだ。顔もかわいい系で、一人で看護婦兼女医+軍人さんというおまけ付き。…しかし、そんな彼女にも重大な欠点が。
「あ…」
お礼を言おうとした時だ。彼女の優しい顔は突如鬼軍曹に変わり、その場にいたピッカリ頭のダカスコスを指差した。
「そこォ!今なにをした!?消毒もせずに傷口を塞ぐとは何事かァ!貴様兵学校で何を学んで来た!?そんな学校なんざ潰れてしまえッ!」
「も、申し訳ありませんでした軍曹殿ッ!うっかりしていました!」
「弁解しとる暇があったら消毒をしろ消毒ォ!全く、これだから最近の兵士は使えんと皮肉られるのだ!悔しかったら死ぬ程働けぇ!円卓組に目にもの見せてくれるっ」
「「「はいっ!」」」
その場の兵士が即座に敬礼。
すぐ側には畏れ多くも絶対円卓組の王と王佐が控えているのに、随分勇気がある発言だ。
部下の扱い方は彼女の方が上だった。そう、ギーゼラは時に恐怖の鬼軍曹でもあるのだ。そんな彼女はの位は立派な士官である。そして毒女アニシナに絶大なライバル心を燃やしているのだ。
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