★リミの部屋★

□†魔王陛下のご寵愛†
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…いいかユーリ、お前は魔王だ。

だからどんな時でも油断をしてはならない!
なんせお前はへ……こら話を訊け!
下町をうろつこうなど、お前は本当に王なのか!?



「そんなこと言われても居続けるのって結構大変なんだぜ?……暇」
俺、渋谷有利。傍から見れば只の高校生。
でもその実体は一国一城の王様なのでした。
「暇だと!?お前は自分の命を何だと思っている!」
そして隣でキャンキャン吠えてんのがヴォルフラム。外見天使だが、その実体はただのわがままプー。
「そんなに心配しなくても……オレ達がついているんだ、大丈夫だよヴォルフ」
そして扉に寄り掛かっているのが名付け親のコンラッド。
人のいい好青年に見えるが、その実体はギャグがとても寒い男。
実は二人は兄弟で父親が違う。しかも二人にはもう一人、長男のグウェンダルがいる。見た目からして1番魔王っぽいが、その実体は可愛いもの好きで趣味は編み物。
この三人を合わせて、魔族その実体は!?繋がり三兄弟という。
「ウェラー卿、だからお前は甘いと言うんだ!それが王を護ると決めた志か?随分と緩いものだなっ」
次兄の発言に眉間に皺を増やし、ヴォルフラムは机を叩いた。次兄はお前もだよ、と言いたそうな顔をして交わしている。
「今日はいつにも増してご機嫌ナナメだな。何でそんな怒ってんの?」
さすがプリンス オブ わがままプー。
まあキング オブ へなちょこに言われたかないだろうけど。
すると美少年は眉を吊り上げ、従っているはずの王を指差した。
「お前に慎み深さというものが足りないからだ!誰にでもへらへらして誰にでもひょっこり付いて行くへなちょこだからな!ぼくが見張っていないと貞節な行動に走る軟弱者め!」
三男は腕組みポーズで鼻を鳴らした。これがお約束のフレーズ。
「それじゃおれが馬鹿みたいな言い方じゃん!つーかへなちょこ言…」

「陛下ーお勉強の時間ですよー!」

誰かが髪を振り乱しながら走って来る。
「げっ…ギュンター!?」
「おはようございます陛下。貴方様のフォンクライスト・ギュンターでございます!ああ本日も変わりなくお美しい、さすが我ら魔族の気高い王!」
「…ギュンター」
美しいのはあんただっつの。
彼は王佐で、超絶美形の過保護な教育係だ。
実はこの時間が1番退屈なんだよなぁ…なんて言ったら海のように涙を流され、眞魔国は大洪水に襲われてしまう。
国の為にも軽率な発言は控えようかな。
…なんだか王らしくなってきたぞ、俺!
「さて陛下、本日は第19代バシリオ陛下の次世のお勉強を…」
教育係はバサッと本やら辞書を出し、今にも授業する気満々。
「残虐王じゃーん!」
そんな歴史学びたくない。
「なんと陛下、御記憶力がよろしい!その通りですとも!バシリオ陛下は魔剣モルギフを手に、人間共に魔族の力を見せ付けたのです!…ああ何と素晴らしいのでしょう!」
そのモルギフも今じゃただの呻くだけのナマクラ刀なんだけどね。…心ん中で呟く。
「やだよー恐いじゃんその歴史。コンラッドニヤニヤしてないで助けてー!……ってあれ、ヴォルフは?」
気が付くと、キャンキャン吠えてた三男坊の姿はなくなっていた。



「あのへなちょこめっ!ぼくはもう知らないからな、くそっ」

ヴォルフラムは石ころを蹴飛ばし、新米魔王を罵りながら城内を歩き回っていた。…その時、

「ヴォルフーっ!」

小さい影がこっちに向かって突進して来た。思わず後ろに倒れる。
「な、なんじゃり!?…ああ、グレタか」
身体いっぱいでぶつかって来たのはユーリ(ウィズヴォルフラム?)の愛娘、グレタだ。
いつもと違って髪を上にまとめ、可愛いらしい毛糸製のうさぎが描かれた服を着ている。
ヴォルフラムは倒されたままの姿勢で、グレタの服の汚れをほろった。…が、
「どうしたグレタ。何を走り回っ……まて、この毛糸製はまさか!」
見覚えのあるうさぎ柄に嫌な予感が。
そういえば最近、長兄からこんなあみぐるみを貰ったっけ…とヴォルフラムは思っていた。
そんな彼の気持ちを知る由もなく、グレタは子供特有の笑みを見せて誇らしげにこう言ったのだ。
「これね、グウェンが作ってくれたの!似合う?かわいい?」
「とても似合うし可愛いのだが…その……ああやはり」
恐る恐るタグをめくると、そこにはマイド イン グウェンダルとしっかり明記。
三男は尊敬する兄の完成品を見つめ、片手で顔を覆った。
その光景は「兄上…」と見て取れる。
普段の兄が威厳に満ち溢れている分、余計にショックらしい。
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