★リミの部屋★
□上様はサンタクロース♪
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いつもより遅くに仕事を終え、先程から見掛けない王を探し、彼は包み絵片手に疲労感たっぷりで寝室の扉を開けた。
「いるのかユー……!?」
「プーであるか?仕事を終えたようだな、本日もご苦労であった」
「ユーリ?」
扉を開けると、見慣れない黒い服に身を包む王・ユーリの姿があった。
室内には不気味な音が響き渡る。というか、髭が黒い!
そこにいるへなちょこだった王の名はユーリ。
眞魔国のへなちょこ魔王で、へなちょこながらもぼくの婚約者だ。
…だがまて、今はそんな説明をしてやっている場合ではないぞ!?
ユーリ、何故へなちょこではないんだ?
「その服はなんだ!それにこの奇妙な曲もなんだ!?今すぐ止めろ、気味が悪いっ」
よく耳を澄ませると、それは異国の言葉で何事か歌っているようだ。
じ、じんぐうべるとは一体……?と疑問に思いつつ、ヴォルフラムは上様なユーリを見渡す。
彼は黒い奇妙な服に白い袋を抱えている。
中には箱状態の物が詰め込まれているのだろう。角張ってるのが丸見えだ。
「ふぉつふぉつふぉつ、苦しゅうないぞプーよ!おぬしへのぷれぜんともぎりぎり準備しておる!」
「ぎりぎりとは失礼だな……それより、奇妙な笑い声をやめろ」
そして絶対関わりたくないと直感したヴォルフラムは包み絵片手に踵を返そうとした。
が、上様が口を開いてそれを阻む。
「我が愛しき姫へ贈り物を贈るのだ!知っているかプーよ、本日は『くりすます』であるぞ」
「くりすます?」
聞き慣れない単語に首を傾げ、ヴォルフラムは即座に腕を組んでは考えるフリをした。
それなら知っている。
少し前だが、ユーリがその事について語っていた。
なんでも友人などと宴会をしながらそれぞれ贈り物を交換するとか……いい子には『サンタクロース』という真っ白なひげ顔の男が来て、贈り物を置いていくとか。
そう、ユーリは『くりすます』とやらをグレタにしてやろうとしているんだな?
という態度をとり、ヴォルフラムは自分が知っていたことをすかさず隠した。
「だがグレタにやるにしてはその量……多すぎではないか?ユーリ、甘やかし過ぎるのは子育てによくない!それが原因で我が儘な大人が出来上がるんだ!」
そのいい例がお前自身だ。
上様はその言葉がカンに障ったのか、鋭利な目線で美少年を見る。
だがヴォルフラムにはその眼光は効かず、上様は思い切り頭部を殴られてしまった。
「ぬがぁっ!お…王に手を下すとはなんたる非道……ぐへっ」
「このへなちょこめ!お前はこうでもしないと元に戻らないだろう!?吐け!一体全体何故こうなったかをなっ」
吐けと言われても婚約者様のドメスティックバイオレンスが炸裂中で上手く話せない。
上様は軽く意識が飛びそうな勢いだった。
−だがその時、寝室の扉が思い切り開かれる。
「渋谷!準備はできたかい?……あれ」