★リミの部屋★

□今日だけコのつく氷の魔術師*
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「いっ……たいではないかギュンター!」
「ヴォ、ヴォルフラム!またしても陛下のお部屋に……ああいえそれ所ではないのです!コンラートはここにいますか!?」
「コンラートか?こいつならさっきから寒い洒落を……なんだ、外にいるのか」
「なんと、いけません!ああ時既に遅かったのですね!」
話が全く見えないおれとヴォルフラムは首を傾げる。当のコンラッドはといえば、ベランダに出て黒い手帖片手になにやら執筆している。…内容は見たくない。
「どうしたんだ?ギュンターが珍しく汗かいて」
とりあえずおれは話しを訊く体制に入った。身体はさっきの余韻で震え上がったまま。
「陛下……絶対に落ち着いて訊けるとこの私、フォンクライスト・ギュンターに一生のご寵愛と共に誓えますか!?」
鬼気迫る表情で迫られる。超絶美形なので迫力が2割増だ。
つーか今、余計なこと言わなかったか?
「おいギュンター、ぼくの婚約者に良からぬ発言はやめろっ」
「つーかおれ達落ち着いてるし」
それに比べておれ達は超余裕で落ち着いていた。だからギュンターから出された言葉に、正直言っていつもの3倍くらいは驚いてしまった。

「コンラートが……コンラートがアニシナの実験品、『これであなたもわらえ〜る2号』を飲んでしまったのです!」

涙ながらに訴える麗しの王佐・ギュンター。……え?アニシナさん?
「アニシナだとォーっ!?」
「わらえ〜る2号!?」
ほぼ同時に叫ぶ俺とヴォルフ。
その前に1号は誰が飲んだんですか。
なんかコレ、洗剤の名前と似てておれとしては全然全くピンとこないんですけど。
「ああああコンラート、私があの時にもっとアニシナを警戒していればこんなことにはっ……!」
「ちょっと待って!アニシナさんの発明品とコンラッドが何の関係があるんだ!?あのダジャレー狂コンラートはアニシナさんのせいなのか!?」
違う違う、ウェラー卿だよウェラー卿。
ギュンターを宥めながら必死に現状を把握する。すると、低血圧を乗り越えて冷静を取り戻した三男坊が腕を組んで溜息を漏らした。
「大方、アニシナの実験台になって壊れたようなものだろう。…違うかギュンター?」
兄二人のことについては誰よりも敏感だ。さすがは末っ子、上をよく見ている。
「そうなのです!実は今朝方、あの赤い悪魔が……」

「その“赤い悪魔”とは誰のことです?ギュンター」

貴女のことです! と言いたげな顔をし、麗しの王佐ことギュンギュンは固まってしまった。『有利の寝屋』にやって来た本日3人目のお客様は、フォンカーベルニコフ卿アニシナさん。眞魔国三大悪夢の赤い悪魔さんでいらっしゃいます。…いらっしゃーい。
「おいアニシナ、コンラートに一体何を施した!?ぼく達を殺す気か!危うく凍るところだったんだぞ」
アニシナさんはキャンキャン吠える三男に目を向け、不敵にニヤリと笑う。
「…なっ、なんだなんだ!?」
あまりの不気味さにあのわがままプーが後ずさる。俺はタオルを投げる代わりに肩を叩いた。バトンタッチだ!
「あのーアニシナさん?なんでコンラッドはいつにも増して爽やか笑顔であんなダジャレを連発するんですか。…な、なにかしちゃったんデスか……?」
すると、赤い悪魔はついに口を開いた。
「それは日々是洒落が寒いと批判を受け続けるウェラー卿が、どうしたら皆を笑わせられるかと悩んでいたので、わたくしがそれを解決させようと発明品を作って差し上げたのですよ!ウェラー卿は躊躇なくその毒薬を飲みました。………で、結果がコレ」
おれ達3人はその瞬間、『爽やかさがウリなあの次男にそんな悩みがあったのか!』とか『つーかそんなことで悩むな!』とか『そんなにウケたかったのか!?』という反応を見せた。

「待てアニシナ!その効能が切れるのはいつなんだ!?」

すると、フォンヴォルテール卿グウェンダルが血相を変えて飛び出して来た。どうでもいいけど毛糸が体中に巻き付いてます。…今日みんな忙しいんじゃなかったっけ?
「おやグウェンダル、毛糸に絡まれていますよ」
「そんなことはどうでもいい!執務室が氷に覆われた!まさに白銀の世界だ。ヴォルフラム、術で溶かせはしないか?何人か凍ってしまった」
「え?あ、はい兄上」
被害状況は最悪だ。執務室が白銀の世界!?寒いのはここだけじゃなかったのか。するとダジャレー狂コンラートが軽快な足取りでやって来る。1番爽やかだが、この場で1番のムードクラッシャー。今なら反感も独り占め。
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