Lollipop candy

□全開ダーリン
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 二人が楽屋を出たのは、結局番組の収録が終わった2時間後のことだった。

「はい、これが上着。それからこっちが鞄で…、あとは帽子ですね」
「サンキュ、那月」

 一つ一つ手渡される荷物を受け取りながら、これじゃまるで召使いかパシりだな、と心の中で翔は笑う。
 後処理から着替えまで、何もかもを那月任せにしていたのだ。
 いつのまにか那月が腰の下に敷いていたタオルのおかげで畳に情事の痕跡は残らなかっものの、体内に注がれた精液はそうはいかない。負担を強いられた翔を慮って、那月が全て掻き出してくれた。
 服にしてもそうだった。背中のホックさえ外せばあとは一人で脱げるのだが、どうにもだるくて自分の手を動かす気になれなかった。それにどうせ先程まで散々恥ずかしい姿を晒していたのだ、多少甘えたところでこれ以上崩れるプライドもない、と。

「ねぇ、翔ちゃん」

 楽屋を出てからは、スタジオからタクシーまでの短い道のりを二人で歩く。その時ふいに那月が立ち止まり、神妙な顔で翔の目を覗き込んできた。

「ん?何だよ」
「この服……ちゃんと洗いますから、また着てくださいね」

 二人の体液にまみれぐしゃぐしゃになった衣裳は、丁寧に畳まれて今は那月の鞄の中にあった。翔のために作られた特注品ということで、収録後にスタッフからそのまま私物にしても良いと言われていたのだ。とはいえ、本当にプライベートで使うことになるとは、夢にも思わなかったのだが。

「あのな、今日だけ特別だって言っただろ……それとも何だよ、やっぱ女の恰好してた方がいいのか?」
「そうじゃありません。翔ちゃんはどんな翔ちゃんでも大好きです」
「だったらいいだろ。俺はもうあんなのはこりごりだ」
「そうですか…」
「…………」

 那月の声に落胆が滲む。
 少し高い位置にある横顔にも、残念だとはっきり書いてあった。大きななりをしていながら、その表情にはどこかあどけなさが残る。欲しいものが手に入らなくてしょげている子供のようだった。

(ったく……何て顔してんだよ)

 やれやれと思いながらも、そんなふうに落ち込まれると参ってしまう。子供のしつけができない親は、皆きっと同じ心境なのだろう。

「わかったよ。ま、せっかくあるんだから着ないのももったいねーし、気が向いたらな」
「わぁ、本当ですか?嬉しいなー!翔ちゃん大好き」

 那月はぱっと顔を輝かせ、幸せ全開の笑みを浮かべた。
 これだからいつも、結局は甘やかしてしまうのだ。昔から、そしてこれから先何年一緒にいても、きっとこのパターンは変わらない。けれど、それでもいいかと思えてしまう自分がいることも確かだった。

(だってしかたねぇよな。何だかんだで、俺も…那月のこと――)

 どうしようもないくらい、愛しいと思う。言えば調子に乗るので決して口には出さないが。

「じゃあ今日はもうさっさと帰るぞ」
「はい!」

 翔は数メートル先のタクシーへと、再び歩き出す。
 隣に並んだ那月へ、その幸せ全開スマイルに負けないくらいの笑顔を投げ掛けながら。






Fin.







1000hitキリリク
☆那翔・甘裏・女装受
ということでしたがいかがだったでしょう??
個人的に卒業&デビュー後設定+楽屋でやっちゃうというシチュに萌えるので追加させていただきました。
それにしても大丈夫なんですかね、コレ…
私なりに頑張りましたが果たして甘くできてますでしょうか。
女装の設定もうまく活かしきれていなかったような…。
もっと精進せねば(汗)

最後になりますが
うさ子さま、キリリク小説の完成が遅くなりまして大変申し訳ありません。
リクエストありがとうございました!


[2012/01/10]


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