二次創作

□金リョ
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「ふぅー」
(ファンタ落ちてないかなー)
などとくだらない願望が頭をもたげるほどにはファンタが恋しくなってきた。
タッタッタッ――。
後ろから誰かの走ってくる音が聞こえた。
「コシマエーッ!!」
後ろから抱き着かれる。
「何しとんのやー?」
「暑苦しい」
本当はその重さや温かさが心地好かったりするのだが絶対言ってやらない。
「なあコシマエ、ここどこや?」
「わかんないのに何で来たの?」
「コシマエの匂い追うてきた」
「におっ…!?」
そんなに俺の体臭は強いのだろうか?
思わず腕を持ち上げて鼻を近付けてしまった。
「ハハハハッ!コシマエおもろー」
「何が?」
俺を指差して爆笑する金太郎を睨む。
だが、全く効果はなく逆ににっこりと笑い返された。
調子狂う…。
「何で顔背けんねん?」
「別に」
お前の顔を見ると心臓がうるさくなるんだよ、なんて言えるわけがない。
「なー、帰り道知っとるん?」
「…そのうち崖に突き当たるでしょ」
「つまりわからへんのやな。あのおっちゃんに怒られるでぇ、わいら」
俺達のジャージを俺ら自身に埋めさせた男だ。迷ってました、なんて言ったら…。
「…くそっ…」
「まあええやないか。コシマエと二人でいられるならわいは嬉しいでぇ」
「なっ…!」
いつもと変わらない無邪気な笑顔で不意打ちをする金太郎が恨めしい。
「もうこっち見んな」
つい嫌なことばかり言ってしまう。
「何でやぁ〜?」
傷付いたという顔で俺の方を見ないようにする金太郎に罪悪感でいっぱいになる。
「……」
「…コシマエ?」
俺はたまらなくなって、ちょっと前を歩く金太郎の服の裾を掴んだ。
「……うそ」
「何が?」
「見ていい、俺のこと」
金太郎の顔が直視できない。でも、俯くのは金太郎に失礼だから、横を向きながらもなるべく顔をあげる。
「見んな、とか…ごめん…」
「……」
金太郎は何も言わない。
さすがに怒らせたかもしれない。金太郎の顔を見るのが恐くて視線は足元へ戻ってしまった。
「本当に…ごめん。先…行っていいよ」
下を向いたまま震えそうになる声に精一杯力をこめて言う。
ぎゅっ―。
「…へ…?」
すぐには状況が理解できなかった。
「ちゃうで、コシマエ。わいは怒ってへん」
「え…?」
金太郎は俺の両肩を掴んで、抱きしめていた体を離した。
「コシマエが急にかわいいこと言うからびっくりしただけや」
そう言って唇を重ねてきた。
「んっ…んぅ…」
自分でも顔がほてっているのがわかる。
「やめっ…」
力の入らない腕で金太郎の胸をたたく。
「コシマエ…煽ってることに気付かへんのか…?」
「んっ…あっ…」
キスの合間に何か言われた気がしたが、聞き返す余裕がなかった。
「…ふぁ…」
金太郎の手が服の裾から入ってきて俺の肌に触れた。
「ちょっ…何して…」
「ええやないか」


「越前ー!!」「金太郎ー!!」


桃城やら謙也やらの呼ぶ声が近付いてきた。


「うぁ、仕方あらへんわ。また今度な、コシマエ」
「こ、今度って…」
「覚悟しときぃ」
金太郎はにんまりと微笑んで声のする方へ走り出した。



「ずっりぃ……」



(ファンタより甘い味、知っちゃったじゃん)



―end―

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