夢で逢いましょう

□第一章 再会は唐突に
1ページ/14ページ

俺は今とても焦っている。育った環境のせいで表情には出ないが。
「早くしろ、広村奏」
口調は淡々としているが挑発的な目を向けてくる。
何を急かされているかだって?新入生代表の挨拶だとよ。そんな話聞いていないし、そもそも何で俺なんだ。
だが、まあここで引くと何だか負けた気分になる。やってやろうじゃないか。
「すいません。今行きます」
すれ違い様におれを呼んだ張本人である生徒会長に満面の笑みを向けてやる。
そして毅然とした態度で舞台に向かった、ように見えているはずだ。…内心緊張しているが。
「こんにちは、新入生代表の広村奏です。僕は今日、白露学園に入学しました。皆さん、高い学力を要求するこの学校に入学するために今まで努力してきたことと思います。それだけに、合格を知ったときの喜びも大きかったはずです。そして、今日まで、多くの期待、不安、目標を持って入学を待っていたでしょう。僕は、正直に申しますと、不安の方が大きいです。レベルの高い本校でついていけるか、不安です。しかし、同時に新しい生活への期待に胸が膨らんでいます。そして、僕の目標は自分のやりたいこと、なすべきことを知ることです。まだはっきりとした将来の構想はありません。だからこそ、本校で皆さんと過ごしながら様々なことを学び、自分と向き合っていきたいです」
これくらいでいいんだろうか?まあ、皆時間を計っているわけじゃないし、大丈夫だろう。
拍手が起こり無難に終わった。俺は副会長らしき人にそのまま舞台に残るよう言われ、入学式が終わるのを待っていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ