runawayブック

□第一部
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ーマックー


『いただきまーす!』


「言ったのはあたしだけどさ・・・少しは遠慮しろよ」


『?・・・したよ?』


奈々がおごってくれると言うから、お言葉に甘えて頼んだ。

いくら親友だからって、そこまでがっつりおごってもらうのは悪いと思った。




「ビッグマッグ、ポテト、パンケーキ、ファンタにシェイク、アップルパイ・・・どこが遠慮してんのよ」


顔をひきつらせて言う奈々。


『もっと食べれるよ』


口をモグモグと動かしながら言う名前に呆れる奈々。


「いいよ食べなくて・・・そんだけ食べなくてよく太らないね」


『なんでだろう・・・生まれつきかな。あ!それか、頭の使い過ぎとか!勉強しすぎてさ』


「あんたに限ってそれはない。あたしならあるかもだけどねー」


ふふんと髪をかきあげる仕草が似合うのがまた腹立たしい。


『そりゃ奈々は頭よし顔よし性格悪しだけどさー』


「最後おかしい」


『あたしだって頑張って勉強してるわけよ』


「あー、えっと確か、燃やすなあぁあ!とか言ってなかったっけ?」



『・・・・・・』



「まあ、泣くか笑うかは自分次第ってことだね」


『またヤなこと言いますね。塾の先生みたい。それで、おごってまで話したいことでもあるの?』



「まあね、あたしの事じゃなくて、あんたの事」


『あたし?』


「んーと、・・・いた。ほら」


『?』


奈々が指さす方を見ると、知った顔が働いている。


冴島君!?


『なに、中学でもうバイトしてんの!?』


「親が元々オーナーで、たまに手伝ってるらしいよ」


てきぱきと片づけをする冴島君。


『へ〜・・・さすが冴島君。あたしが見込んだ男だけあるね』




入学した時に初めて見た時から、あたしは冴島君に惹かれていた。


秀才でスポーツもできて優しくて、まさにモテる男子の代表だった。


中学一年生の時から、2年間の恋・・・


それは未だに実ってはいなかった。





「・・・あたしが一番言いたかったのが」


『あ』


奥から来た可愛らしい女の人。


高校生くらいで、おそらくアルバイトの人なのだろう。


「あれ、できてるらしいのよ」


うそおおぉおん!!!


思わず握りつぶしたアップルパイ・・・



−−−−−−−−−−



『はぁあー・・・』


店から出てきた名前と奈々。


「そう落ち込むなって!もっとイイ人は世の中たくさんいるんだから!」


だから元気だせ、と一生懸命慰める奈々。


やっぱ見せない方がよかったかな・・・


知ってて黙ってるのはこっちも辛いし・・・


『もうあんな奴知らない!吹っ切れた!』


ああ、この子引きずらないタイプだった。



『お腹もいっぱいになったし!どっか行く!?』


「受験生でしょ、勉強しろ」


『ちぇー』


「受験終わったら、たくさん遊ぼ!」


『・・・うん!じゃ、また明日!』


「ばいばい」


後ろ向きで手を振る奈々を見た後、名前も自宅へと足を運んだ。


−−−−−−−−−−


『ただいま』


「こんな時間までどこ言ってたの!?」


『っ・・・奈々とマック行ってた』


帰って早々にこれかよ・・・


「奈々ちゃんにまで迷惑かけたの!?あんたねぇ、自分が今どんな状況か、そのちっぽけな脳みそで考えてごらん!!」


『!!・・・あたしだってちゃんと自分の状況くらいわかってるよ!』


「ならなんで授業中寝たりできるわけ!?今日先生から電話が来られたわ。もう話し聞いててお母さん恥ずかしがったわよ!次先生にどんな顔であえばいいの!」


『変な顔』


「いい加減にしなさい!!!」


パァン!!



『っつ・・・』


ジンジンと痛む頬をおさえながら叩いた人を睨む。


「そのままで高校行けると思ったら大間違いよ」


『・・・ぅ・・・ら・・・』


「なに?!」


イライラした口調で聞いてくるのがイライラする。


『そう思うならお母さんが受験すれば!!!あたしにさせたいことがあるならあんたがまずやればいいじゃない!!!!』


「・・・!!」


また手を振り上げる。


「ダメ!!」

母の手を止め、間に入ってきた影。





そのすきに名前は家を飛び出す。



「お母さん、二度はぶっちゃだめ」


「ゆみ・・・」


間に入ってきたのは、名前の2つ下の妹、ゆみだった。


「お姉ちゃんも自分ではわかってるよ。ただ、苦しいんだと思う」


「・・・あんたは偉いね。2つしか変わらないのに、なんでこう違うのかしら・・・」


ゆみの頭をなでる。


ゆみがその時笑っていたことに母は気付かなかった。





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