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□ただの通りすがりです。
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学校帰り。
いつも通り、部活を終えた私が帰路に着くのは七時半。
今は冬だから、もう真っ暗だった。
徒歩通学。
すこし学校までは遠いけど、歩くのが好きだから、徒歩通学。
みんなには理解して貰えないけど。
徒歩通学のみんなは、大抵家が近くにあって、その大多数が団地方面。
私は反対側の少し田舎の方向だから、帰りはいつも独りぼっち。
ちょっと寂しいけど、夜空に浮かぶ綺麗な星空を眺めながら歩いていると、寂しさなんか吹き飛ぶんだ。

今日も、独りで夜道を歩く。
街灯の無い、暗い道。
夜空を眺め、心配する親の顔を思い浮かべ、少し早足になる。

「ね、ちょっと良いかな。」

突然話しかけられ、振り向くと、明らかにガラの悪い、三人くらいのお兄さんたちが立っていた。
本能的に、こいつはマズいんじゃないかと悟る。
「あの、私、急いでるので。」
怯えたら相手の思うツボ。必死に平然を装い、早足に歩き出す。
手首をつかまれ、引き戻される。
「強気な女、嫌いじゃないぜ?」
誰かが言う。
だったら弱気になればいいのかと言いたくなるが、我慢する。
弱気になったところで返さないくせに。
1人の男に両脇を抱えられ、リーダーと思わしき独りが顔をのぞき込んでくる。
顔が近くて気持ち悪い。
ふいと目を逸らすと、ニヤリと笑って目をあわせてくる。気持ち悪い。
「お兄さんたちと、楽しいことしない?」
言いつつ、顔を近づけてくる。
こんな気持ち悪い人に、ファーストキスなんか奪われたくない。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
自由な足で男を蹴ろうとした。察したもう一人の男に制される。
嫌だ嫌だ。気持ち悪い。
でももう目の前の顔は数センチ。もう諦めて、涙をこらえて覚悟した。

ドンッ

音がする。目の前の男がよろけ、倒れた。後ろに続く、サッカーボール。
飛んできた方向を見ると、私と同じくらいの男の子が立っていた。
だれだろう。見覚えがあるけど、街灯もない暗がりで顔がよく見えない。
「なにしてんだよ。」
怒りを含ませた声。
私を拘束してた男の一人が、私から離れ、ガラの悪い声を出す。
「あぁ?ふざけてんのかこの坊主!!!!」
先程のリーダーらしき人は気絶してるみたいで、動かない。
サッカーボールは跳ね返った反動で彼の元に戻っていて、そのサッカーボールを凄いコントロールで蹴り、見事男の腹に命中した。
男は恐らく、先ほどの様に頭を狙ってくると思ったのか、頭を手で守っていたので、がら空きだった腹は痛かったろう。
呻き声上げ、倒れた。
私を拘束する男が小さい悲鳴をあげる。まさかサッカーボールなんかで、とでも思っているのだろうか。
私を放り、逃げ出す男に苦笑する。

「大丈夫でしたか。」

先ほどの怒りはどこに行ったのやら、優しい声が聞こえた。
ふと見上げると、ピンクの髪を二つに縛った、中学生らしき人が居た。

「は、はい、大丈夫です。ありがとうございました!」

ぺこりと頭を下げ、上げる。
「私、お礼できるもの、なにも持ってません…」
「大丈夫ですよ、大したことしてません。」
にこりと笑って、少し険しい顔になる。
「こんな遅い時間にこんなところ歩いてちゃだめですよ。」
この人は百面相なのか。
「家があっちなんです。」
指を指した方向。家までもう少し。
「送ってくよ。危ないし。」



お言葉に甘え、送ってもらうことになった。
もうすぐそこですと断ったけれど、半ば無理やりについて来た、というのが正しいだろうか。
やはりというか、ろくに会話もせずに、すぐに家についてしまった。
「ちょっとまっててください、なにか持ってきま…」
「大丈夫ですよ。それじゃ、また。」
背を向ける彼の名前も聞いていないことを思い出す。
「待ってくださいっ!名前も聞いてません…っ」
彼はこちらを向き、「霧野蘭丸。」と言う。


ただの通りすがりです。
恋に落ちた瞬間だった









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またまた即興で書いた蘭丸夢。
だめだもう文才ほしい。

お題はまたもやコランダムさまから頂きました!






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