dream
□愚直にからかい
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「ねえ、せっくすしよう」
隣でぼうっとテレビを眺めている様子のカイジに唐突にそう言ってみる。ちらりと横目で見ていると、もしかして聞こえてなかったのかなと私が思うくらいの間の後びっくりするぐらいの勢いで彼はこちらを向いた。なんだろう、私の言葉が耳に入って脳に届いて処理するまでに時間かかったのだろうか?
「はあ?!」
そんなに驚かれるとは思って無かったから目をぱちぱち瞬かせているとすっとカイジの手が伸びてきて私のおでこに触れた。
「熱…ねえな、どうしたんだ?そんなに退屈だったか?」
…そんなに心配されるとなんだか複雑な気持ちになってしまう。そんなに予想外の言葉だったのだろうか。全然おかしいことはないはずだ、全くしたことない初々しいカップルだという訳でなし、そういう気分になることもあるだろうし。しかしカイジったら朝からテレビ見たりごろごろしたりで何もしていないのが退屈すぎて私が皮肉でそんなことを言ったとでも思っているんじゃないかと感じるほどの慌てよう。
「いや…なんか、したいなって」
まあ特にそういう気分でも無かったし何もすることがないような穏やかさも心地よかったんだけどこうなったらカイジをそういう気分にさせるのも面白いかななんて少しずつ思い始めてしまう。恥ずかしがってるみたいに俯いたままカイジの手をぎゅっと握るとわっと声を上げられた…なんなのその反応。
「なんつーか、その、悪かった」
「何が?」
「いや…そうだ、散歩でも行くか?買い物行くのもいいし…」
必死に話を逸らそうとしているのが丸分かりで思わず笑ってしまいそうになってしまう。俺はこんな状況は全く慣れていませんって言っているようなものだ。私だって不慣れだけど。
「…じゃあキスだけでもいいから」
視線を上げて彼の顔を見ると案の定真っ赤で、からかいたい気持ちが余計大きくなってしまう。カイジの両手を握って阻止されないようにして顔を近付ける。じっと目を見て笑むと目を逸らされた。この様子じゃキスもしてくれないだろうなと諦めて、抵抗されないうちに一方的に頬にちゅっと口付けた。
「もうこれでいいことにしてあげる」