short

□正しい二人の別れ方
2ページ/2ページ

先輩は、体育の授業以外誰も訪れないような倉庫裏にいた。

「先輩、こんなとこにいたんですか」

無視。
ぴくりとも動かずに膝をたて、顔を埋めて座っている先輩に苛つきを覚えながらも俺は話しかけることを止めなかった。

「先輩。ねえ、先輩ってば。ちょっと、聞いてます…?」

無視。本当に聞こえてないんじゃないかと思う程、清々しいほど無視してくる先輩を、俺はただただ眺めていた。

「何で無視するんですか」
「何で泣いてるんですか」
「俺には解りますよ」
「泣いてるんでしょう」
「誰のせいですか」
「誰のために泣いてるんですか」

そう問いかけても全て華麗にスルーされる。
とうとう痺れを切らした俺は、先輩をこちらに向かせようと手を伸ばした所で気が付いた。
いや、気が付いてしまった。

手が、先輩に触れられない事に。

フラッシュバックされる記憶と感情が、一気に戻り涙が溢れる。

何だ、涙は出るのか。

「先輩…」

震える声を振り絞る。

「約束、守れなくて、ごめんなさい…」

聞こえないことは解ってる。解ってるけど、自然と口が動いていた。

“明日も頑張ってゴール、守ろうな”
そんな些細な約束だったのに。一緒に頑張
ろうって、約束したのに。

俺、死んじゃったみたいです、先輩…。

何故音が聞こえにくかったのか。
何故体が軽い気がしたのか。
キャプテンが何を話していたのか。
その話を聞いて天馬君達が何で泣いていたのか。
霧野先輩が何でこんな所でうずくまっていたのか。
何故俺が先輩に触れられなかったのか。
何故…先輩が泣いていたのか。

肉体から切り離された魂だからだと、気付いてしまった時にはもう遅くて、今更後悔に苛まれる。

初めて会った時から好きでした。大好きでした。
今でも大好きです。
抱きしめて欲しいなんて、言わないから。
どうかもう一度、微笑んで…。

成仏仕切れずに先輩の元までやってきた馬鹿な後輩だけど。

きっとまたあなたの後輩として生まれ変わるから。

そしたらまた、嫌がらせしてしまうかもしれないけど…。

「俺、生まれ変わったら女になろうかなあ? そしたら、ずっと楽かもしれないですもんね? センパイ」

わざと憎たらしく言った。
だって、俺らしいでしょう?

「…かり…や…?」

何を思ったのか、ふと顔を上げた先輩の瞳が、紛れもなく俺の瞳と合う。

目を見開いた先輩は、勢いよく立ち上がったかと思うと、俺に
向かって手を伸ばした。

俺はそれを避けて後ろへと下がる。

「ははっ先輩なんかにさよならなんて言わないんだからな!」
「こ…このば狩屋ッ! 先輩には敬語を使えって何か言ったら解るんだ!」

怒鳴る先輩に、止まっていた涙が再び溢れ出す。
ああ、いつもの先輩だ。
酷く安心した。

消えていく身体が、タイムリミットを知らせる。

「また先輩の前に現れるかもしれないですけど、許してくださいね」
「ああ、また説教してやるから、早く帰って来いよ」

(ああ…先輩はなんで、こう、いつもいつも…)

「馬鹿先輩が寂しがらないように、早く帰ってきますよ言われなくてもー」
「こいっつは何でこう、最期だって言うの…に……」

自分で言って勝手に俯いた先輩を俺は、触れることは出来ないと解っていても、先輩の頬に手を当て、先輩が顔を上げた瞬間に触れることすらないけれど、初めて俺からキスをした。

「またね、センパイ」



(出会えて良かった。なんて)
(がらじゃないでしょう?)





反省文―――――

初めての文がこんなんで申し訳ないとつくづく思いますよ…。まじで。
だが後悔はしていない←
死ネタ…。どうやったら泣ける話がかけ
るんですかね…。
まあ、この二人はあれですね。
最期まで憎まれ口叩き合ってそうですよねっていう話でした((
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ