4つの季節と僕らの心
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時は流れ放課後。
サッカーが出来るのは嬉しいが、やはり問題はあの女顔先輩だ。
俺は制服を脱ぎ、ユニフォームを着ようと袖に腕を通した所で背中に鋭い痛みを感じた。
何事かと後ろを振り返ってみると、今まさに頭の中を(嫌な意味で)うめつくしていた先輩が立っていた。
「…何ですか」
「ん、これ。やるよ」
「…は?」
先程まで俺の背中に押しつけていたと思われる物を目の前に差し出してきた。
「…。ウーロン…ですか」
見てみると紙パックのお茶だった。しかも俺の大嫌いなウーロン茶。
「間違えて買ったんだ。だからやる」
「はあ? 意味わからないんですけど。だったらそっちが欲しい」
俺に差し出されていない方の手には紅茶が握られていた。
(…成る程。少し似てるから間違えたとでも言うのか。…アホだろ)
「駄目だ。ウーロン茶嫌いだから。俺が」
「いや、俺も嫌いなんですけど」
「いいから飲めよ」
何その強制…。こんな所で先輩権限使わないで欲しい。
何が悲しくて嫌いな飲み物を飲まないといけないんだ。意味がわからない。
俺が渋々お茶を受け取ると、先輩は満足したのか笑顔になった。
どうも食えない人
だ。
顔はいいのに性格が残念だと俺は思う。
それにしても、何故わざわざ俺に渡しに来たのだろうか。
天馬君だったら快く貰ってくれただろうに。
紙パックにストローをぶっさして、何故か俺の隣に立って飲んでいる先輩に若干苛々した俺は「お茶、ありがとございました」と嫌味ったらしく言って準備の手伝いをしに行った。
* * *
「狩屋、先輩と何話してたの?」
「ん―…? まあ、色々と」
サッカーボールが入った入れ物を運んでいるときに天馬君が尋ねてきた。
見られていたみたいだ。
適当に返事をすれば、相手からも「ふーん」と大して興味なさげな返事が返ってきて苦笑する。
「霧野先輩と仲良いよね、狩屋って」
「…はぁ!?」
ちょっと待てどうしてそうなった。何処をどう見たら仲良いって思えるんだ。
よくわからないけれど何故か嬉しそうににこにこ笑いながらとんでもないことを言い放った天馬君。
きっと、手が空いていたら頭を抱えていたに違いない。…頭が痛くなってきた。
どうやら天馬君の中では俺と先輩の仲が美化されまくっているらしい。
これにはもう絶句するしかなかった。