4つの季節と僕らの心

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入学式程かったるい物事の始まりはない。
そんな中で校長先生とやらの話も上手く聞こえる筈がない。

周りを見れば盛大にあくびをしているやつがいて吹き出しそうになった。
危ない危ない。

やっと校長の話が終わったと思えば、今日初めてお目にかかる担任に名前を呼ばれたら立つという何とも恥ずかしい事をいちいちするのか、中学という所は。

次々に呼ばれていく知らない名前と、それに「はい」と元気よく答える知らない奴等。

しかも全員呼び終わるまで座れないとかあれだ。拷問に近いだろこれ。

俺は早くも施設に帰りたい気持ちでいっぱいになった。


* * *

「今日からお前達の担任になった円堂守だ。よろしくな!」

俺のクラス、1年A組の担任、円堂守という男は、サッカー部の監督らしい。
教卓に立ち、嬉しそうに話していたのは覚えている。。



(サッカー部か…。見学、行ってみるか)

中学校生活初日。
放課後は各自自由に部活の見学や体験が出来る。

これと言って得意なこともなかったが、強いて言うなら昔からサッカーをするのは好きだ。

だから朝、円堂先生が監督をしているらしいサッカー部に見学しに行くことにした。


号令をし、
教室から人がどんどんと出て行く中で、俺もその波に乗って教室を出ようとした所で「狩屋!」と呼ばれ腕を引っ張られる。
いきなりだったので思わずバランスを崩した俺はその場に尻餅をついた。

「いっ…てぇ」

誰だ、と引っ張った相手をキッと睨みつけると、呆れた。
俺の隣の席になった松風天馬とか言う奴が大丈夫!? おろおろしながらごめん!と何回も謝ってきた。

「大丈夫。俺は平気だけど、どうしたの?」

すぐに表情を笑顔に変えてさっと立ち上がる。
そうすればそいつはほっとした表情になった。

所謂、俺のこれは猫被りと言うやつだ。
だって、何回も謝られるのは好きじゃない。

こうしてれば大抵の人は俺が人当たりの良い奴だと、優しい人間だと騙されてくれる。
面倒な事にならずにすむならこんな楽な事はない。



「あ、あのさ! 狩屋は何処の部活見学するの?」
「…そう言う…えっと、天馬君…は?」
「俺は勿論サッカー部!」

勿論とつく意味が分からないが本人は当たり前だとでも言うように表も裏もないような笑顔を見せた。

「へぇ、俺もサッカー部、見学しようと思ってたんだよね」

にこ、と笑って言うと、天馬君は「本当!? じゃあ一緒
に行こうよ!」と目を輝かせて俺の手を取って引っ張り、そのまま走り出す。

危うく転ぶところだったが、今度はなんとか転ばずにすんだ。
尻餅よりはまだましなのだろうが。

何か文句言ってやろうかと思ったが、何故か目の前を走る彼の背中がとても懐かしく思え、俺は何も言えなくなった。


中学一年の春が今始まった。



――――――――――

・猫被り狩屋
・無邪気な天馬

始まりました長編!
かなり長くなりそうです。

信助はいないのか。そんな事聞かれそう。
あれです。
信助は別のクラスで天馬と凄く仲良いわけでもない。
そんな感じで読んで下さるとうれしいです(*^o^*)

天マサ要素ェ…

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