「来週から、私のクラスに教育実習生がくるそうなんです」

「へぇー」

沖田さんのへぇーは興味ないけど、話は覚えているよという合図だ。

前に出かけたときに興味ないのかと思い、話を切り上げようとしたら

”続きはないの?”と催促された。

興味ないのでは?と思ったけれども全部話すと、茶化した返答だったり、

真面目な返答だったり、本気で興味がなさそうな返事が返ってきたりと

反応は様々だった。

でも、一応、話は聞いて覚えてくれている。

返事がない時は、大概怒っている時や面白くない時だ。

教育実習生という話題は興味なくもないけれども、といったところなのだろうか。

話題に出してしまった以上、最後まで話さないといけないような気がして、

続きを話すことにした。

「2週間だけだそうなんですが、沖田さんと同じ大学の方だそうなんです」

「へぇ、じゃあ、僕の知ってる人なのかな?」

「名前は当日にならないと教えてもらえないそうで、私もまだ知らないんです。

でも」

「でも?」

「沖田さんのお友達の藤堂平助さんが教育実習で希望校をうちの学校にしたらしくて、

先週、連絡がきたので、藤堂さんだったら楽しそうだなって」

「確かに平助だったら生徒に慕われそうってゆうか、生徒より下の立場になってそうだけど」

「さ、さすがに下の立場はないのではないかと」

「そう?あ、でも平助、案外中学生からはモテるかもね」

先生姿を想像してみたけれども、どちらかというと、マスコット的な意味で

人気が出そうだ。

休み時間とかも生徒にまざってサッカーとかしてそうな、そんなイメージだ。

「確かに、人気者になりそうですよね」

「人気者、ね」

私の膝の上で苦笑する沖田さんの前髪をそっと撫でる。

その腕が突然掴まれ、熱を帯びた視線が私の瞳に入り込む。

「平助の話はもういいでしょ」

「はい」

拗ねたような顔が愛おしい。

ゆっくり起き上がった沖田さんはそのまま私の頬をゆっくりとなぞる。

「せっかくの休日なんだからもっと千鶴ちゃんを堪能させてくれる?」

コツンと額をあてて甘えるような声を出す沖田さん

意味がわかった私は真っ赤になりながらもコクコクと頷く。

優しいキスが深くなってゆき、そのままソファに倒れこむ。

明日から暫くは研修というもので会えなくなる。

その寂しさを埋めるように沖田さんの胸板に顔を埋めて彼の匂いを身体中に

しみこませた。



翌日ーーーー



「教育実習生の沖田です。今日から2週間、宜しくお願いします」



総司がそっちの学校の教育実習なの知ってるか?

同じ学校でよかったな。ついでにクラスも同じならすげーよな!



そんなlineが私の携帯に届くのが同時だった。

目を丸くする私を視線がぶつかると悪戯っぽく少しだけ口端をあげた沖田さんの顔を

私は忘れることができない。



「皆さん、短い間ですが宜しくお願いします」



大きく見開いた瞳が”驚いた?”と笑う沖田さんの瞳とぶつかった。

ドキドキする胸を押さえることができない。

固まる私に担任の先生の沖田さん紹介はまるで耳には入らなかった。

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