「好きと大好きって何が違うと思う?」
「・・・・・・」
学校の帰り道、幼馴染の雪村千鶴と久々に下校していた
斎藤は彼女からの思わぬ質問に目を見開く。
「斎藤君は、どう思う?」
真剣な彼女の眼差しから、最近思い悩んで溜息をよくついていたのはこういうことか、と納得する。
しかし、好きと大好きの違いと唐突に言われても正直斎藤にはどうこたえてよいのかわからなかった。
だから必然的に至極まともな回答しか出てこなかった。
「どちらも似たような感情だと思うが」
「ちょっと違うような気がするんだけど、やっぱり同じなのかなぁ」
「どう違うというんだ?」
「えっとね・・・・・・」
言葉を選びながらつっかえつっかえ千鶴は最近の自分に起こったことを話し始めた。
斎藤が頭の中で要約した結果、どうやら近所に住む大学生の男と最近、よく出かけるようになったが、その男が自分にとってどういう存在なのかに悩んでいる。という話だった。
斎藤にとってはまさに寝耳に水の話だ。
千鶴とは幼馴染でいつも一緒にいた。
言葉にしなくても互いに互いの思うことがわかる仲だ。
そんな自分たちだったが、数か月前に千鶴が体調不良で学校を休んだ日を境に千鶴が変わった。
突然変異、とでもいうべきなのかとにかく変わった。
<中略>
「だが嘘は嘘だろう?」
「そうだけど、そうかもしれないけど、でも・・・・・・」
「でも?」
「でも、嘘だけど嘘じゃないから、許せちゃうの・・・・・・」
ね、変でしょ?と困ったように笑う千鶴に斎藤はザワつく胸を抑え、
平常心を装い、
「では意地悪の話はどうなんだ?千鶴、お前昔から意地悪
する人が嫌いだっただろ?」
千鶴は昔からよく男子に意地悪されたりからかわれたりしていた。
よくある好きな子ほどいじめたいというやつだ。
そんな輩から斎藤はさりげなく守って、牽制していた。
だから、千鶴が自分に意地悪する人に好意を向けるなど到底信じられない。
信じられるはずがなかった。
それゆえ斎藤は千鶴が発した言葉に衝撃を受けた。
千鶴は意地悪されるけど、その意地悪が実は少しだけ
好きだったりもする、と頬を赤らめて白状したのだ。
信じられないという顔をする斎藤に、千鶴は困ったような顔をしながらも
どこか嬉しそうな顔で抱きしめられたり、たまに唇に触れられたりもしてちょっと困るけど、
それでもそれが嬉しかったりもする。と言葉を続けた。
「・・・・・・」
驚いて絶句する斎藤に、気づいているのかいないのか、千鶴はだから自分自身も
びっくりして困ってるの、と顔を赤らめて俯くのだった。