SONG for you...(短編)

□追いかけてくれる君が好き
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「沖田さん、沖田さん」

「なあに?千鶴ちゃん」

1日1回あるかないかのやりとり。
もっと毎日、僕を追いかけてくれればいいのに。

「あ、千鶴ちゃん!僕、おはぎが食べたいな」

「え?おはぎ、ですか?」

「うん、おはぎ」

「多分、作れるとは思いますが……」

「じゃあ作ってくれない?」

「あ、はい。皆さんの分も作った方がいいでしょうか?」

「なんでみんなの分が必要なわけ?」

「え?誰かいらっしゃるから皆さんで食べるのでという事ではないのですか?」

「そんな事でいちいち僕が君のところまで出向くと思う?」

「…………いいえ」

「なら、どうして僕が君のところにわざわざ来てる意味、わかるよね?」

「えっと〜……もしかして、沖田さんが食べたいだけ、とか?」

「あたり。てゆうか僕、最初におはぎ食べたいっていったよね?」

「す、すみません」

「ま、いいや。ちゃんとあてたからご褒美に撫でてあげるよ」

ポンポンと頭を撫でるとちょっと恥ずかしそうにしながらも目を細めて嬉しそうな千鶴ちゃん

「じゃあ僕、待ってるから作ってきてね」

「ええっ?!い、今からですか?!」

何言ってるの、この子。
この話の流れから当然、今の話でしょ

「当たり前でしょ。あ、でも美味しくなかったら作り直しだからね」

「お、沖田さん?!」

「じゃ、頑張ってね。僕、待ってるから」

ひらひらと手を降って隊務に戻る僕と立ち尽くす千鶴ちゃん。

廊下の影に隠れてみていると、よし!と気合を入れて台所へ向かう

その姿を確認してから僕は(土方さんがうるさいから)隊務へと戻った。

「沖田さん、沖田さん」

高く結いあげた髪を揺らしながらトタトタと嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる千鶴ちゃんが視界に入ってきた

「なに?どうかしたの?」

手には昨日僕がお願いしたおはぎを持っている。

わかっていても聞かずにはいられない。

「あの、沖田さん、今宜しいでしょうか」

「うん、大丈夫だよ」

「あの、これ、作ってみたのですが……」

「ほんとに作ってくれたんだ」

「はい。近頃食欲のない沖田さんが食べたいとおっしゃってくれたので、頑張ってみたのですが……」

正直、驚いた。
だって僕がお願いしたのはほんの出来心だったから。

「ありがとう、食べていい?」

「はいっ」

嬉しそうに笑うと高く結いあげた髪がくりんと揺れる。

「美味しい……」

「よかった。沖田さん、甘いの好きですけど、最近食欲がないっておっしゃってたので、もち米の量を少なくしてできるだけ柔らかくしてみたんです」

「え?じゃあほんとに僕のためだけに作ってくれたんだ」

「え?当たり前じゃないですか。だって沖田さんが食べたいって言ったんですよ?」

何言ってるんですか、と笑う千鶴ちゃんに僕の口元は自然と緩む

「じゃあ次は千鶴ちゃん特性のおしるこでも食べたいなぁ」

「えっ?!」

「きっと、あんこ、余ってるんでしょ?」

「あ、はい。ですが」

「なら食べたいな。ダメ?」

少しかがんで顔を近づけると

「…………だ、ダメじゃない、です……」

恥ずかしそうに俯いて夜にお持ちしますね、と小さな声で約束してくれた。

「沖田さん、沖田さん」

「なあに?千鶴ちゃん」

「おしるこ、作ってきました!」

追いかけて呼びかけてくれるこの瞬間が僕は一番好きだ。

だって君の頭の中は僕でいっぱいってことでしょ?



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