羅針盤と銃一丁
□それは誰にもわからない
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「今度は、ちゃんと、
珠生さんと暮らせるといいわね…」
囁かだが塚を作りながら、
加世は独り言のように呟いた。
そこへ花を添えた彩売りは、
数秒目を閉じた後屋敷の方へと視線を投げる。
思い起こすのは、先程離れた小さな背中。
屋敷の最後の主の姿。
「…あれは、
真の話だ」
己に言い聞かせるように繰り返す伊行に、
彩売りはただ業務的な口調で述べる。
そこに含まれるのは、
嘲笑でも嫌悪でもなく無。
なんの感情も込めずにかれは淡々と言葉を紡ぐのだ。
「そうですかぃ。
それがあんたの真。
あんたの守ってきたもんの全てだ。」
結果がでた後に何を語ってももう遅い。
坂井の屋敷は潰れるだろうし、
彼が残そうとしたものはなにもない。
ただ、これからまた、苦汁を舐める生活が待っているのだろう。
全ては振出に。
それが報いであり、
償いでもある。
ただ、
そう言い残すと彩売りは踵を返した。
やはり、なんの感慨もわかなかった。
、