羅針盤と銃一丁
□それは誰にもわからない
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「こんな屋敷の中じゃ、
嫌なんじゃないかしら…」
「いや、
珠生さんと一緒のほうが、良いだろう」
化猫騒動から半日。
屋敷の隅にある井戸の前には、
加世と小田島の姿。
そしてそこから少し離れた所に、
薬売りと彩売りの姿があった。
* * * * * * * * *
それは、
あの小さな存在が流しきれなかった涙のように、
豪華絢爛が彩るその空間には、
細やかで酷く美しい紙吹雪が舞った。
化猫を払い清めた薬売りは、
中央の台座へと視線をやる。
そこには、
くすんだ毛並みのみずほらしい猫。
しかし、その存在は何処か凛として
目には見えない輝きがあった。
その、二度もの死を経験した体を抱えあげたのは、
今まで沈黙を貫いていた彩売りで。
「……珠生さんの、元で、
眠らせてやりやしょう…」
頷いた加世と小田島のはからいで、
その遺体は珠生の亡骸が捨てられた場所へと誘われたのだ。
、