羅針盤と銃一丁

□置いてきぼりな真実
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ちりん、






涼やかなその音は、
穏やかだがしかし確実に己の覚醒を促す。
それに従い瞼を持ち上げると、
そこは不本意ながらも先程離れたはずの部屋だった。





−いや、少し違う。





部屋は同じ。

印象的な丸天井が目に止まる。






だが、










       −帰して?−





      『帰してだと?』









そこに居るのは、
一人の女と一人の男だった。






薬売りは目を見開く。




「…これは…」






戸惑う彼に構わず、目の前の二人はさらに時を進めていく。




女は自分を帰せ帰せと乞うが、
男はそれを煩わしげに払うばかり。


女はついに痺れをきらし、
強い瞳を持って出口へと駆け出した。



それに慌てたのは、
先程まで
まるでとりあわなかった男の方で。

必死に待遇の良い条件を突き付けるが、彼女は見向きもせず足を進める。






薬売りは、
その真っ直ぐな瞳に彼を思い重ねた。

飄々としていて至極気まぐれ、
お気楽主義で卑屈な所が面倒で。
だが、彩売りもまたこんな目をして前を睨んでいた。









一人場を託してきた彼に、
なぜだかとても逢いたくなった。








しかし、









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