羅針盤と銃一丁

□踊り食い!
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化猫は、
この期を逃すまいと身を切り離し襖から飛び出す。
そして薬売りの立ちはだかる正面からは突破が難しいと考えたのか、横をすり抜けるように2つに分裂した。



余りの素早さに一瞬呆然とした薬売りだが、すぐにたてなおし札を投げる。

皆へ向かって飛ばしたそれだが、
伊國達へは冊が邪魔をし
さとは自らそれを拒んだ。

札に囲まれた
加世と小田島と伊行の三人は、
周囲に巡らされた己を守る金色に驚いたように目を剥く。




化猫は邪魔をされた事を悟ると、
身を翻してその元凶である薬売りへと憎悪を向けた。




「…っ!」






かは、と薬売りの口から血が飛び散る。


人間の身には重すぎる衝撃に耐え切れず、
彼の身体は宙を舞った。




飛ばされる一瞬。
視界を横切った彩売りの顔は、
恐ろしい程の無表情であった。










とぷん、







波紋一つを残して、薬売りの体は襖を彩る朱へと沈んだ。







「皆、
死んじまえばいい!!」






狂ったように笑うさとが、被りを振って喚き散らして。
それに伊國がびくりと肩をゆらし、笹岡が気のふれそうな目で宙を仰ぐ。










「…そうですかい」






さとの言葉に反応した彩売りは、
微かにその口角をあげる。

思い起こされるのは
記憶に垣間見た彼らの欲望。









−嗚呼、狂っている








     −ならば、いっそ−








正気とは程遠いさと達の様子に、化猫は満足げな笑みを浮かべて身を踊らせる。









「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!」








「…食って、しまいなせぇ」





その赤い舌が、三人を捕らえた。








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