羅針盤と銃一丁
□彩売りの男は一人ごちる
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赤い、赤い世界。
血のような涙のようなそれに体を沈めて、
彩売りは静かに目を閉じていた。
突然、
この世界に何かがのたうつように複数の波紋が広がる。
「…嗚呼、また一人、死にやしたか」
ぽつりと呟いて、
彼はぼんやりと目を開く。
「…あなたは、何がしたいんですかぃ?
………………珠生さん。」
視線の先には、
白無垢姿の一人の女性が。
その汚れない白は、
この空間を満たす赤によく映えて。
彼女は、彩売りの姿を見とめると
酷くゆっくりとした様子で首を傾けた。
「…貴方は、なんで居るの?」
人としての自我が長年消えていたせいか、
絞り出したようなその声音は酷く幼い。
彩売りはにっこりと微笑むと、
人に馴れていない猫にするそれのように
優しく手を差し延べた。
「手前は、彩売り。
極彩色の“彩”を“売る”で
彩売りと申しやす。
あんたの願いを、
叶えに参りやした。」
、