羅針盤と銃一丁
□這う凶器
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ちりん、
突如鳴ったそれは、悲しげな音を立ててその余韻を広げた。
まがまがしい存在感は、
薄い障子一枚隔てた向こう側の側面まで迫っている。
障子から滲みでるその気配が、
塩の囲いが突破された事を物語っていた。
「…!?」
それに気づいた薬売りの背中を、
つう、と冷汗が伝う。
水江は、何者かの視線を感じて涙に歪んだ面を上げた。
そこに在ったのは、愛しい娘の死に顔ではなく。
「…み、ずえ……さま……」
美しいまでに狂気じみた双眸を持った、
別人の女の顔がそこにいた。
水江は、余りの事に思考が追いつかない。
目を飛び出さんばかりに見開き、
目の前の非現実をながめる。
「み…ずえ、さ…まぁ…」
彩売りが真央の唇に引いた紅梅の紅が、
艶やかで毒々しい紫の色へと変わる。
花嫁の口が、異業の形へと歪められた。
、