羅針盤と銃一丁

□動く狂気
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ふと、加世が外を見遣ろうとして障子の方を見る。
しかしそこには夥しい数の札が群れをなしてそれを閉め切っており、外界の明るさを知ることは出来なかった。



「…今、何刻でしょう…?」



呟くように発された声に、
小田島が眉を寄せて唸る。


「…さあ?
子の上刻か、下刻か…」



「まさか、
このまま夜が明けないなんて事は…」

「そんな事あるわけないでしよ!」



不安げな加世の言葉にすかさずさとが噛み付いた。
彼女も閉ざされた空間で息苦しさを感じているのか、至極苛立っているようだ。





チリン、


その時、
何処かで小さな鈴の音が響いた。



チリン、



弾かれた様に顔を上げた薬売りの表情は、
今までにない程の緊張を孕んでいる。

彩売りも懐の銃…蕃茄に手を伸ばし、
音のした方を睨みつけた。
彼の頭上では羅針盤が世話しなく針を回している。





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