羅針盤と銃一丁

□恨み辛みの裏の裏の裏の
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「…人の縁と因果が巡って、
物の怪を成す…」



その声は、
深く染み入るような響きを含む。
周りの人々は皆一様に押し黙り、
その不思議な声音に耳を傾けていた。


その空間は、
まるで一つの水溜まりのよう。
薬売りの投げ掛けた波紋は、
やがて空気全体を揺らすのだ。



「その“真”と“理”を、
聞かせて貰いたい」




真剣な眼差しで周りをぐるり見渡した薬売りは、その後は一切口をつぐみ
誰かが新たな波紋を投げるのを待つ。

それを成したのは、勝山であった。
彼は小馬鹿にしたような態度で
鼻をならす。


「…何だ?その真と理というのは?」


その問いには、
皆気になっていたのか、一斉に視線を薬売りへと移した。



「…“真”とは、事の有様、
“理”とは、心の有様。」





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