羅針盤と銃一丁

□化け猫はなんとやら
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加世が先だって土間へ入る。
しかし、二、三歩進んだ所で怖ず怖ずと振り返った。



「…あの、待ってて下さいね、
何処かに行ったりしないで下さいね…!」

「行くもんか、大丈夫だ!!」



拳を握り締め声を張り上げる小田島に、
加世は少し安心したように微笑んだ。




ぐるりと土間を見渡していた彩売りは、
鼻につく独特な匂いに眉を潜める。


「……こいつぁ…」


その時、


「ひゃいっ!!?」




いきなり、どすん、という派手な音と共に加世が奇声をあげた。

「痛ったあーーい!
誰よもう、こんな所に油零した人!!」


足元を見れば、確かに一部てかてかと油特有の光が見受けられる。


「油、
ちゃんと仕舞ってある筈なのにぃ…」



ぶつぶつと一人ごちる加世を助け起こしに行く小田島の背中を見つめ、
彩売りは難しい顔をした。

自分が嗅いだ匂いの正体は油だったのだ。


「……化猫は油を舐める…ねえ…」





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