鬼さんこちら、
□破壊の右手T
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目の前の扉が、やけに大きく見える。
入る事はやはり躊躇われ、
俺はため息を一つ零してそれへ背を向けた。
情けなすぎる。
隣で不安げに佇む弟へ帰ろう、と告げようとして、
「エドワード君!」
己の背中にかけられた声に、びくりと肩が揺らいだ。
あんなに大きく感じた扉はすんなりと開いていて、そこから出て来たのは見慣れた女性の軍人の姿。
「あ…、ホークアイ中尉」
「どうしたの?こんな朝早くから」
そう問う彼女だが、だいたいの予想はついているのだろう。
俺は気まずくて顔を伏せると、搾り出すようにして蟠りを吐き出した。
「あのさ、エリオット、見つかった?」
それは、昨日重態のまま姿を消した彼女の事。
いなくなったと知った瞬間一緒に探すと散々言い張った俺達だったが、結局は焦った様子の大佐に今の状態の俺らは邪魔だ、の一言で切り捨てられてしまった。
「……まだ、見つかってないわ」
伏せられた中尉の目に、罪悪感が込み上げる。
「…そっか…、ごめん。
あとさ、タッカーと、ニーナは、
どうなるの?」
もう一つの疑問。
それに、
中尉は酷く固い顔をこちらへ向けた。
「タッカー氏は資格剥奪の上、中央で裁判にかけられる予定だったけど…、
死んだわ」
え…、と呟きが漏れる。
隣で、アルが息を詰めたのがわかった。
「正式に言えば、“殺された”のよ。
それと、娘のニーナは…、
行方が、わからないの。
黙っていてもいつかあなた達も知る事になるだろうから、教えておくわね」
「そんな…なんで…誰に!?」
中尉の言葉が、ぐるぐると頭を回る。
「わからないわ。
私も、これから現場に行くところなのよ」
「オレも連れてってよ!」
「ダメよ」
「どうして!!」
「見ない方がいい」
それが俺らを按じたものだと気づいた瞬間、それ以上縋る事なんて出来はしなかった。
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