鬼さんこちら、
□命、多々
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雨が冷たい。
ぱしゃり、と跳ねた水は、私がはいているぶかぶかな靴に染み込んだ。
これは先程見張りの軍人から拝借したもの。
そういえば、私の靴はロイが拾ってくれただろうか。
「む、タッカー氏に用事か?」
かけられた声に目だけを動かせば、
門前には見張りの軍人。
「一般人は立ち入り禁止になっている。
用件があれば…」
至極丁寧な物言いに、東方司令部は良い人材が揃ってるな、なんて考えながら
にやり、
笑みを浮かべた顔をそちらへ向けた。
「失礼、通るよ」
「 え 」
目を見開いた顔は、すぐさま土砂降りの雨が作った水溜まりへと沈んだ。
、